四川・北川県 深刻な土石流災害

地震で甚大な被害を受けた四川省北川県は、
今度は深刻な土石流に見舞われました。
地元の人たちは、
「今回は、今年の二度目の大きな天災です」と言い、
現地の人たちにとって、大地震並みの災害だと見ているようです。


なお、土石流は北川のみならず、四川の比較的広い地域で起きているようです↓
http://www.sc.xinhuanet.com/content/2008-09/26/content_14504008.htm
http://www.xinhuanet.com/chinanews/2008-09/25/content_14499798.htm
http://www.myxhw.com/content/2008-9/25/2008925100704.htm
http://www.sc.xinhuanet.com/content/2008-09/26/content_14504234.htm


弘美さんを初め、日本の皆さんから預かっている義捐金の寄付先について、
引き続き、受け入れる適切な対象世帯を探しています。
ペースが遅くてごめんなさい。

7月に安県の趙さん一家に送金したのに続き、
やっと二世帯目の対象先が決まりました。
北川県曲山鎮任家坪村の王学さん(39歳)一家です。
地震で妻を失い、現在は、14歳と9歳の娘二人の世話があるため、
出稼ぎにいけず、現金収入を失いました。
当分、この生活が続きそうなので、
弘美さんとも相談して、義捐金の寄贈対象として妥当だと判断しました。


ところで、王学さんに送金したのは先週の火曜日午後遅い時間帯でした。
しかし、いまだに王さんの口座に送金額が入っていないことが分かりました。
送金先の中国銀行を頼んで、調べてもらった結果、
土石流の影響の深刻さが改めて分かりました。


王さんは、普通の都市商業銀行の口座はもっていません。
地震が起きてから、政府が被災者のために作った
「家園カード」(発行元:四川省農村信用社合作銀行。農村地区のみの金融機構)
が配給されました。
北京の中国銀行から王さんのカードに送金するまでには、
以下のプロセスが必要で、うまくいった場合でも2日間がかかるようです。


1)中国銀行北京分行
2)→中国銀行四川分行
3)→四川省農村信用社合作銀行本社
4)→四川省農村信用社合作銀行王さんの所属している拠点


本日の確認で、送金は3)まですでに入金していることが分かりました。
4)へ送金する前に、深刻な土石流で道路が寸断され、
電気が普通になり、ネットワークが機能できなくなったようです。


送金の確認は、ネットワークが復旧してからになります。
天気予報では、9月いっぱいまで大雨が続くようで、
復旧するまでに当分、まだ時間がかかるようです。


以上、取り急ぎ送金の様子をご報告まで。
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四川大地震、任家坪村8組と王学さんについて◆

任家坪村:山腹部にある村落。地震の断層にある。
     トウモロコシや茶が主な作物。
     出稼ぎが盛んで、
     地震前、全体的に物産が豊かで、生活が比較的良かったようです。


王さんのいる8組について:
     村人計120人、大地震で18人遭難。
     住宅は倒壊しなかったのは13棟のみで、それ以外は全壊。
     6000本の杉の木が崩れた土砂に埋められる。
 

     倒壊した家屋の瓦礫の整理は、各自自力でやる。
     9月半ばに電話したところ、
     王さんは「もう半分が片付いた」と言いました。
     村にとって、一番の難題は、
     村の再建のための土地が見つからないこと。
     もともとの場所はもう断層にあるため、もう使えない。
     かと言って、山のふもとで安全な土地を見つけたくても、
     まだ見通しが立たない。


王さんについて:
◆家族構成と仕事:
 地震前、村から離れた町で、卸売り商の社員食堂で働いていた。
 妻は娘二人と村で暮らしていた。
 地震で妻が倒壊した家屋の下敷きになり帰らぬ人に。
 14歳の長女は9月から北川中学の分校の二年生、
 9歳の次女は9月から小学校4年生。


◆経済事情
 一家の貯金は4万元ほど。
 政府からの地震援助金、(10元/日+0.5キロ食糧/日)×3ヶ月分。
 また、地震後、救援に入ってきたボランティアたちも
 食べ物を少し置いてくれたため、
 食糧についてはとりあえず心配はない。
 

ただ、家の再建には12万元(約180万円)が必要ですが、
出稼ぎに行けないため、現金収入が入りません。
家を建てるには、政府から5万元の融資ができますが、
王さんの場合、家で働ける大人は一人で、
担保がいないため、審査に合格するには一苦労するようだと言います。


一方、中学生の長女は毎月、生活費400元、
次女は毎月100元かかります。
地元では、中学に入ると、学校が遠くなるため、
農村出身の子は全員、寄宿生活をしています。
学費は無料ですが、寮生活を維持するための費用がかかるのと、
それから、2週間に一回実家に帰るための交通費もかかります。
次女の昼食は、肉の入ったおかずを避けても
学食では一食2元がかかります。


地震の後、王さんは十キロ痩せました。
何よりも心の慰めになっていることは、
娘二人が親の気持ちを良く分かってくれて、
暇があれば、洗濯物や炊事の手伝いをしてくれました。
ちなみに、
炊事は、地震前、村で電気を使っていましたが、
今はドラム缶の中に薪や倒れた家屋から拾ってきた廃材、
農作物のわらなどを燃料に使っています。


「何があっても、生きぬきたい。
 極力明るい気持ちで、闊達な態度で人生に臨んでいる。
 力いっぱい、娘二人に良い教育をさせて、
 将来、良い暮らしができるようにしたい。
 それが生きがいです」、と王さんは言う。


私が電話したのは、中秋節の前夜でした。
「12元で、月餅を6個買ってきた。一人2個ずつ食べられる。」
四川訛りの強い言葉ではありますが、王さんは落ち着いた口調で
話し、一家3人、テントで迎える中秋節の過ごし方を話してくれました。
笑顔すら見えるような声でした。


数日後に土石流が起こるとは、
その時は誰が予想したことでしょう。



■本日、王学さんに電話で聞いた話

任家坪では先週末から天気が崩れました。
土石流が起きたのは24日早朝4時頃でした。
23日夜、テントの中で、
王さんは土石流の発生が心配で、
夜通し目を閉じることができませんでした。


4時頃に起きた土石流で、村人21人が土砂に埋まり、
その中から2人は助かり、病院で手当てを受けています。
助かった2人は命に別状はないようですが、
ほかの人は帰らぬ人となりました。


土石流が起きてから、王さん一家もテントを出て、
2.5キロ離れた知人の家に向かって歩き出しました。
今、王さんのテントも土砂に埋まり、
地震の廃墟から少しずつ掘り出した家財なども、
今回の土石流ですべて流されてしまいました。


なお、村人はすべて、親戚や知人のいる安全なところに撤退し、
村には現在、住民がいません。
小中学校も休校になっています。
政府からは布団が配られており、
また、火を通さなくても腹ごしらえができる保存食が
配給されています。


天気予報は、大雨は今月いっぱい降り続けるだろうとしています。


王さんには、二人の兄がいて、同じ村に暮らしています。
兄たちもそれぞれ、地震で家族を失い、精神的に不安定のままです。
今回は、兄たちと一緒に、避難生活をしています。
今のところ、皆さん、体調は悪くないですが、
「川の増水がまだ続いているため、いつ、何が起こるか分からない
 という恐怖感が残っています。
 天から与えられた大きな災難が、今回で二回目となります」
と言っていました。