クレージー!「車が走れる道路を返してくれ」

 「つばめねえさん、北京人は“クレージー”になったよ(疯了!)」
 夕方、興奮した面持ちで北京っ子の後輩Wくんが話しかけてきました。「ねえさん」とは、中国の職場では年上の女性を呼ぶ時の丁寧な言い方です。
 「どうかしたの?」
 「今晩は眠れない夜になるよ。交通管理所の前は新車のナンバープレート登録手続き待ちの人が長蛇の列。たぶん徹夜して作業することになるのと違う?」
 「何でそんなことに?」
 「明日から元旦の連休明けまで、ナンバープレートの登録手続きを一時停止する通達が発表されたからだよ。だから、いまは死に物狂いのクレージー状態だよ」

 そこで思い出した本日のニュース↓
http://japanese.cri.cn/881/2010/12/22/161s168443.htm
 

 なんと先週一週間、北京では3万台の車が販売されたということです。先々週は、2万台だったのに。さらに遡ると、今年に入ってから、北京の一日あたりの自動車販売台数は1900台でした。つまり、週平均12450台でした。凄まじいスピードとしか言いようがありません。
 そして、先日聞いた「今、北京の自動車市場に行くと、どこも車が一台も見えないよ」ということも。そのわけは、車という車はすぐに売られてしまうからです。教習所にもまだ行ってないのに、早々と一ヶ月前に車を買っておいたという友達がいますが、彼女の例は少数ではないようです。

 さて、Wくんが興奮した顔になったわけはもう一つあります。「北京市政府がここまで道路の渋滞を深刻化させたのは、まともなやり方と思うのか」ということに、皆の「否定」を得たいのです。
 運転大好き人間のWくんはかわいそうなことに、ここ3〜4ヶ月、1〜2回しか運転していないようです。
 「以前は南四環はめったに渋滞しなかったのに、わずか3〜4ヶ月で見る見る、南四環も駐車場に化したよ。コツン、コツンと一歩ずつしか前へ進めない。運転は苦痛そのもの。まったく、ぼくは政府の自動車購入奨励策の被害者なわけよ」
 かと言って、突然、購入制限政策に踏み切るというやり方に彼が賛同するというわけでもない。
 「要は、やりたい放題だね。日本だと、こんなことしたら、とっくに支持率ゼロになってるよ」
 日本留学暦ありの彼はため息をつきました。そして、いつもの物静かなしゃべり方とうって変わって声を張り上げ、「普通に車が走れる道路を返してほしい。ただ、それだけのことだよ」と声高らかに言いました。
 しかし、だからと言って、彼にも良い方法があるわけでもありません。「北京のガソリン価格は今、1リットル7元ちょっとでしかしないけど、できれば、それを20元にすればよいのにな」と自分の犠牲も承知しながらのポイズン・ピル(Poison Pill)を提案しました。
 
 付け加えさせてもらうと、金融危機の打開策として、北京市は2009年から1600CC以下の車購入に対し、自動車取得税の半減(普通は一台につき、購入価格の9〜11%の取得税を徴収していた)を打ち出しました。その政策が2年間続いたのですが、11年から取り消すことになりました。聞くところによれば、渋滞しなければ、1600CC以下の車は100キロにつき7〜8リットルしかガソリンを消費しないが、渋滞に巻き込まれると、12〜13リットルにまで高騰するので、省エネ効果は渋滞で台無しになるようです。
 
 クレージーな北京の渋滞事情。まだ現在進行形です。運転マナーの問題もあり、交通事故が急増し、高度成長の国の痛ましい代価なのです。

◆参考
http://japanese.cri.cn/1061/2010/12/27/161s168680.htm