新聞配達の「北京」

ひょんなことで、10月1日から、新聞紙を購読することになりました。


ネット書店で本を購入しましたら、
届けてくれたのはなんと、『新京報』の新聞配達でした。
「協力会社なので、ついでにこのエリアの配送を担当している」。
電気自動車に乗ってきた彼は、
私の住まいからそう遠くないところから本を届けてくれたのです。


「本の配送は一回につき、1.5元の収入が入る」。


24、5才の新疆生まれ。
両親は江蘇省の生まれで、辺境建設の支援に新疆へ行ったそうです。
2年前に出稼ぎに北京へ。就職活動している内、
新京報』の求人広告が目に留まり、
3000元の身元保証金を支払い、一年契約で仕事を始めることになりました。
月給900元。毎月、購読募集のノルマがあり(今月は8000元)、それが達成できれば、
賞金がもらえ、合計1500元の所得になります。
これまでは、「個人の収入にこんなに大きな差があるから、
ノルマ達成できるよう日々頑張って」きたため、賞金が引かれたことはまだありません。
ただし、ノルマが達成できなかった場合は、
やむを得ず、自分で残りの分を穴埋めすることもたまにあります。
そう言っているうちに、自転車にぶら下がったズックの袋から
新聞一枚渡されました。
「私がとった新聞です。どうぞ。」
半年分の新聞を5部、自費で購読しているようです。


毎朝は4時に起床。4時半に集合して、準備をする。
私の住んでいる石景山エリアには全部で2万部の購読者がいて、
30名の新聞配達で分担して届けています。
彼は300あまりの個人世帯に毎日届けています。
「新聞はだいたい6時半前には届けている。
 私たちのユニークなサービスは、
 新聞配達とついでに、ごみを集めることだ。
 前の夜に、捨てたいごみをボックスの下においていただければ、
 配達のついでに持っていくので、
 お客様もぜひご利用ください。」


まさか、こういうサービスがあるとは。
目が点になって聞きました。
たまにしかニーズがないけど、言われてみれば、
確かに便利かもしれません。


新聞配達が終われば、ついでに、ネット書店の配達の手伝いをする。
今月は幸いなことに、100回以上の依頼が入ったようです。
中秋節国慶節がもうすぐ来るので、うれしい!
この間、給料は倍もらえるので」
普段は一日32元で計算されているが、
連休中は60元に値上がりされます。
しかし、代価は365日休めないことです。
休日になると、月餅や植物油などの現物も支給されるようで、
大満足のようです。

ところで、新聞社により、配達自身も部数に応じて、
費用が入りますが、『新京報』の場合は一切ないようです。
「福祉の面では良いほうだと思うけど、
 ほかの新聞社で働いている同郷は、
 毎月私より1000元も多くもらっている人がいる。」
不満もあるようです。
しかし、転職はそう簡単ではありません。
辞職届けを出して、許可がもらわないと、身元保証金が戻ってきません。
しかし、許可がもらえるには、
次にはいってくる人にノウハウをすべて教え込ませることが前提です。
「契約は8月に更新したばかりなので、
 今退職してしまうと、年末のボーナスはもうもらえない。
 去年は1200元だったよ。後4ヶ月我慢すれば、
 ボーナスがもらえるので、今はやめるタイミングではない。」

毎日、夜は9時に全員集まって点呼。
その後はやっと各自の自由時間になります。
勤勉で、誠実そうで、よく働く。
365日間も休まずに働いて、1.5元を手に入れるため、
電気自動車で走り回っている。
「北京人」の私の生活を支えてくれているのは、
彼らのような人たちのお陰なのです。


すべての人間が、働くことにより、充実感と満足感が感じられる。
そんな世の中、いつか実現できないのでしょうか。