懐かしい“帰来的燕子” アグネス・チャンin北京

一瞬にして記憶を蘇らせる。
それが音楽です。


中学の時、「テレビは勉強の邪魔になる」と思っていた父は、
なかなかテレビを買ってくれませんでした。
そのため、クラスの皆が見ていた
「帰来的燕子」コンサート(22年前)は、
私は見るチャンスがありませんでした。
アグネスのことを写真や皆の歌詞ノート、
ラジオのリクエストでしか知るチャンスがありませんでした。
だから、ずっと自分はアグネスのファンとは言えないと思っていました。


しかし、夜の人民大会堂で、一瞬にして、
涙が出そうになるほど、自分がアグネス・チャンのファンだと知りました。
彼女は記憶のスイッチの操縦者のよう。
普段なら絶対思い出すことのない昔のシーンが、
次から次へと思い出されました。
懐かしかったです。

時はどんどん過ぎ去ってしまいます。
思い出も遠ざかっていってしまいます。
しかし、歳月との戦いに負けずに、
アグネス・チャンは元気にがんばっています。
驚くほどの若さと衰えない歌唱力を保っています。
しかも、3児の母親を立派に勤めています。
北京のコンサート現場にかけつけてくれた息子さんも。
80歳になるお母様も応援に来てくれました。

時代は明らかに変りました。
世相も考え方も感情表現もどんどん複雑になりつつあり、
理解のできないことがたくさん起きています。
しかし、アグネスの歌は、
ちっとも複雑ではありません。
「青山緑水」や「青草地」が永遠の背景で、
故郷は心中の変わらないテーマで、
世の暮らしが必ず良くなっていく。
不動の信仰があります。
また、愛の告白や謳歌は、実にやさしくて素直でした。
時がめぐり、価値観も変わり、
が、アグネス・チャンは歌であの時代を引き止めました。


カラオケもまだ登場していなかった時代に、
かつてほとんどの中国の若者が
アグネス・チャンの歌を口ずさんでいました。
曲数が多くはなかったが、
それだけ強いインパクトを与えました。
22年前のコンサートが種をまいたコンサートのようでした。
それがあったからこそ、
今回のイベントが開かれました。
変わらぬアグネス・チャンに励まされた夜でした。