景徳鎮の行商

わが家の団地に来てくれたのは、およそ10日前からだったと思います。
40代前半の男。スーパーの軒下で、ラッカを設置し、
大小さまざまな、色とりどりのつぼや花瓶が置かれ、
品は大通りの脇にまで並べられていました。
傍にテントが張られ、そこで寝泊りするようです。

出勤中にいつも目に留め、見てみたかったですが、
今日はやっと見るチャンスがありました。
「売り出し最終日」。看板が掲げられていました。


コバルトブルーの地に金色で縁取ったボタンの絵が施されている
筒状の入れ物と、瀬戸物の腰掛が気に入り、
買うことにしました。
「310元だったのを300元にする。
 もうこれ以上安くすることができません。」


故郷は景徳鎮の町から3キロの県。
元々は工場の労働者。レイオフに遭い、
今は一年の間、8ヶ月が全国行脚。
「今年は売れ行きが思わしくなく、収入は1万元になるかならないか」。
嘆いていました。
妻は郊外の地下室を借りて暮らし、
毎日、お弁当を作って差し入れに来る。
それ以外の時間は、すべて一人で「店」の番をする。
商品を入れる倉庫がないので、夜は基本的にそのままにしておく。
見張りも一人でする。
テントの中はもちろん暖房がない。
北京はこれから冬になり、寒くなるので、
早く売りさばいて家に帰りたいという。


そこまで身の上話を聞きだして、
「もっと安くして」という台詞はさすが口から出せませんでした。
しかし、やはり300元は高い。
心を鬼にして、「もう少し何とかできないか」と聞いてみました。
彼が嬉しい表情と悲しげな表情が同時に彼の顔を掠めました。
「では、もう20元安くしましょう。」
嬉しかったのは、確実に買ってくれるということでした。
片手に一個ずつもって、15階のわが家まで届けてくれました。


よいのか、悪いのか、私まで複雑な気分になりました。
今日も、「売り出し最終日」の看板が掲げられています。