奇跡の背後 大地震を耐え抜いた農村部の中学

今日は番組ネタからのコピーです。


■奇跡の背後 大地震を耐え抜いた農村部の中学■


地震を経た中国は、この頃、建築の品質の問題がよく議論されています。
そんな中、24日の新華社通信が配信した「倒壊しなかった学校」の記事が目立っています。
このほかにも、劉漢希望小学校のことが良く取り上げられています。
ここでは、とりあえず、「桑棗中学」(中学校のみの学校)の例を紹介します。
今の中国社会が強く求めているものがこめられている報道です。


四川省安県桑棗中学。北川のすぐ隣にあります。
ここには2200人の生徒と百人以上の教師がいます。
教室がある建物は全部で8棟あり、地震で、そのうちの一部は部分的に倒壊していますが、
地震が起きた時、700人の生徒が授業を受けていた本館は無事耐え抜きました。
全校生徒と先生は無事脱出し、けが人も一人も出ませんでした。


このような奇跡が起きたのは、校長の葉志平先生の普段からの取り組みも関わっているそうです。
つまり、校舎の建物の品質への重視と、
学校教育に避難訓練をカリキュラムに取り入れたことです。


桑棗中学の教室棟のうち、20年前に建てた本館ビルは経費不足のため、
建築資格を持たない地元の建築企業に請け負ってもらいました。
そのため、竣工した後、しかるべき認定すら受けることができていません。
先生たちから「危ないビル」といわれていました。


10年ほど前に、葉先生が校長になってから、この危ないビルの補強工事を始めました。
経費が不十分だったため、数年間かけて補修をしました。
当初、17万元で建てた「危ないビル」を安全なビルにするため、全部で40万元が投入されたそうです。


「子どもたちを任せられている以上、安全を確保しなければならない。
 そうしないと、子どもの両親たちに顔向けできません」。
 葉校長の言葉です。


一方、他所の学校で、生徒が圧死事件に巻き込まれたことなどを受け、
2005年から、桑棗中学は毎年、避難訓練を学校教育の一環に取り入れました。
避難する時は、クラスごとの通路、生徒が教室を出る時の順番、走るスピード、
先生の立ち位置など、きめ細かく指導が行われました。


また、毎週火曜日は交通安全と飲食安全をテーマに、
特別レクチャーが行われることも定例になっています。
こうした普段の取り組みが功を奏し、地震が起きた日は、
わずか1分36秒で全校生徒と教師は、クラス単位で運動場に避難することができたそうです。


地震が発生したとき、出張で綿陽に出ていた葉校長は大慌てで学校に戻ったとき、
運動場で整然と避難を終えた生徒と教師たちを目にして、
葉校長は涙を流して、安堵の表情を浮かべたそうです。


すべての中国人に、「奇跡」の背後の努力ぶりを知ってもらいたいです。



■同済大教授、「建物の向きと断層の向きを垂直方向にすべき」■


今回の地震は、中国の社会発展の問題点を一部反映したものとなりました。


ここ数年、新農村建設というスローガンの下、
農村地区に数多くの見た目に非常に近代的な建物が建てられました。
しかし、こうしたまだ新しいはずの建物が地震で相次いで倒壊しました。
専門家が現場で調査した結果、倒壊した建物の多くは、見た目には、近代的な外観をしているものの、
しかるべき現代的な建築法で建てられていない「にせ現代建築」であることが指摘されています。


中国の住宅と都市・農村建設省の結成した再建専門家チームのメンバーで、
同済大学建築と都市計画学院の呉志強院長は、成都市の被災地で収容所の建造や
再建計画の計画案を制定する仕事をしています。(「東方早報」の報道です)



呉院長が5月18日、先遣隊として被災地に赴き、実地調査をした結果、
農村部、もしくは農村と都市の隣接地帯にある建物が最も多く倒壊したことが分かりました。
これらの多くは建築基準に達していないものか、建てる前に、地質学的調査もなく、
計画案も立てていないものでした。
こうした教訓を汲み取り、呉院長は建築基準通りに住宅を建てることの大切さを指摘し、
また、地震の断層地帯だからこその工夫を提案しています。


その提案というのは、地震を引き起こす断層の特徴を把握し、
それに合わせる形で住宅の向きを決めるというものです。
何故なら、呉院長は、断層の方向と住宅の向きとは密接なかかわりがあることに気づいたからです。


「われわれは地震の発生を正確に予測できません。しかし、地震波の伝わる方向に影響されて、
家屋が揺れています。そのため、断層の亀裂が起きる方向を把握して、
それにあわせて、家屋の向きを適切に配置すると、
それだけで住宅の耐震強度を引き上げる効果が期待できます。
再建計画を練る際、断層の発生する方向を十分に考慮する必要があります。」

 
呉院長によると、仮設住宅を例に、もし向きが断層の亀裂が入る向きと垂直方向にあるなら、
少なくとも耐震強度を3ポイント引き上げられるとしています。
今回の震源地でも、亀裂が入ったり、斜めに傾いたりしているものの、
倒壊しなかった家屋がありましたが、その理由の一つに、住宅の向きも関係しているということなのです。


仮設住宅の設置についても、事前の地質学的調査の必要性も訴えています。
仮設住宅でも、しっかりと行き届いた計画を立てるべきです。
何よりも、地質的な断層地帯に家を建ててはなりません。
現場の調査情報から見ると、断層は一本の帯状のものではなく、一塊になっていることが分かりました。
こうしたことは、仮設住宅の設置にのみならず、今後の住宅の建造においても、
しっかりと視野に入れておく必要があります。」


今回の重い教訓は、果たして覚えられるかどうか…
いまの努力こそ正念場です。