続・消費金融 賛否両論

 消費者金融の解禁発表で中国国内で議論が続いています。大手メディアがプラス的な面(金融革新、内需拡大効果)に注目して報道しているのに対して、インターネットや活字メディアでは様々な視点から議論が展開されています。ネットを中心にまとめてみます。

 ちなみに、日本では「消費者金融」と表現していますが、中国では「消費金融」と称しています。もしかして、制度設計者として、そこに根本的な違いをつけようとしているかどうか(具体的には、現金の貸し出しはしない、消費用途のみに使う)?門外漢の私が勝手に憶測していますが…

■冷静派
とにかく制度の紹介に徹している。感情は入れず、冷酷に状況分析だけをしている文章:
对我国发展消费金融公司若干问题的思考
 主な内容は以下です。

政策導入の背景:
 ・投資でGDPが牽引されている中国。個人消費による寄与率が低い。2009年第一四半期を例にとると、住民の消費に対する与信残高は3.94兆元で、各金融機構の信用貸付に占める割合が約11%だった。ただし、その中から不動産ローンを除けば、残高がわずか4500億元で、全体に占める割合はわずか1.29%しかない。対して、アメリカでは住宅ローンを除いた個人消費の銀行貸付に占める割合が26%も占めていた。
 ・中国の一人当たりGDPは3000ドルを超えている。自動車、住宅などの大口消費財へのニーズが目立って上昇している。消費金融の発展に大きな潜在性がある。

他国の経験:
 日本関連の経験について以下のようまとめていた。
 ・ノンバンクを主体に。たとえば、日本の「消費金融公司」にはサラリーマン向けに消費信用貸付を提供する「金融会社」と「手形割引会社」(原文では、<日本称“SABAKIN”>となっているが、おそらく「SARAKIN」の入力ミスでしょう)があるほか、質屋、クレジットカード会社、通信販売会社と総合リース会社などがある。
 ・完備した個人使用管理体系の構築。
 たとえば、日本は『割賦販売法』『貸金業法』などの法制度で企業もしくは個人の信頼違反行為を規制しているため、そこから良好な社会信用意識が形成された。日本の個人信用制度は比較的完備しており、早くから個人信用センターを立ち上げた。全国銀行個人信用センター、通販システムのCIC消費者金融システムの「全国信用情報連合会」という個人信用情報を提供するセンターが三箇所ある。

 なお、中国で消費者金融を導入する上の課題として、市場のポジショニング、マーケッティングのモデル、個人信用システムの整備、リスク管理を挙げていました。
 興味深いことに、貸付後のリスク管理について、「消費金融公司は固定貸付管理モデルを真似て、貸付が認可されてから融資を消費者にではなく、直接販売店に振り込むようにし、また、適時に販売店に貸付代金の用途に対するモニタリングをするよう委託する」としました。
 この点、日本以外の国でのやり方がよく分かりませんが、日本の消費者金融業の融資に「不払い率が高い」ことにしっかり目を配って、考えた出した中国的解決策なのかどうか?

■中立派
首批消费金融公司年中试水(8日付け 『上海証券報』)

 「専門家は、消費金融公司の設立は中国が金融イノベーションを推し進める上での突破で、金融機構システムの完備にプラスとなり、消費の拡大、経済の成長モデルの転換に対する金融業の役割発揮に役立つことができると見ている。ただし、消費金融公司の営利について、異なる見解がある。『充分にリサーチした上で行った決定だったので、良い将来性があると見込まれている』と楽観視している消費金融公司の創設にかかわる銀行の関係者もいれば、疑いの目で見ている非関係者もいる。


■慎重派
たとえば、消费金融公司仍需迈过多道坎 。【来源:第一财经日报】
 消費金融の目指すところは、消費を促し、内需を拡大して、中国の消費の成長、経済構造の転換により多くの期待をもたらすこととしているが、ただし、果たして消費金融の形でそのような効果が期待できるのか、慎重に見る必要があると主張する。その一番の理由は、中国人の「これから入る収入を先に消費に回す」ことには慎重であるという消費習慣によるものとしている。

 慎重派は、消費金融そのものの問題点を心配するより、中国人の消費習慣(まだ入手していないお金を先に使ってしまうことに抵抗がある)に合わないので、期待通りの内需刺激効果がないのではと見ている。しかも、不動産ローンとカーローンが対象でないので、効果が小さいものに止まるだろうとしている。
 ただし、短期的には直接的な促進効果が期待できないものの、長期的に見ると大きな意義があるとしている。つまり、「小口でも与信可能、審査にかかる時間が短い、担保なし、柔軟にサービスできる、貸出の周期が短い」というユニークな形の金融サービスを中国で樹立したことだ。


■ちなみに、消費者金融の話題をすれば「取立て」(催帳、上门挨户索要)のことが欠かせません。
 これに関して、9日付けの『成都晩報』は<消费金融公司催账 不得威吓骚扰>と題した記事を掲載しました。
 融資上限、取立て、利子の設定などについて、『消費金融公司試点管理弁法』の規定の引用として、以下のよう紹介しました。
 ・貸付金額の残高は申請者の月収の5倍までとする;
 ・貸し出し金利は融資側のリスクに応じて決められるが、ただし、法律の許す範囲内とする;
 ・取立てには威嚇、脅かし、嫌がらせという不当な手段を使ってはならない。
 ・貸出金利の上限は中国人民銀行の基準金利の4倍以内までとする。


■ネットユーザー(網友)たちの反応は何故か「Sina」では肯定的な意見がより多そうですが、
鳳凰網」では否定的な目で見ている人が多かったようです。

 賛成派の理由には
「個人向け信用貸付の空白を埋めた」、
「ほしいものが手に入りやすくなり、生活の質がアップできる」、
「政府認定の銀行が出資者になっているため、闇金融で不法融資を受けるよりはよっぽどまし」
などがあります。
 対して、反対派のあげていた理由は、たとえば以下のものです。
「事実上の合法高利貸し」、
内需拡大に一番必要なことは所得を増やすこと、とりわけ農村部住民の所得を増やすこと」、「不動産ブームだけでバブルの規模はまだ大きくないと政府は考えたようで、低所得層の人にもバブル拡大運動に加わってもらう配慮をしているかのようだ」、
「金融リスクを大きくし、貧困状態から抜け出したばかりの人を再び貧しくする恐れもある」…