就诊记―風邪で抗生物質の点滴

うっかり風邪を引いてしまいました。先日まで、北京は暖かい気温が続いていたため、室内の集団供給の暖房が入っていないのに気づかず、薄着していたからかもしれません。

風邪を引くと、いつもは「寝る」+「大量に水を飲む」+「おいしいものを食べる」で風邪を退治していました。しかし、今回は何故か効果がありません。家にある電子体温計を出してみましたが、何故か故障してしまい、ピピピとは鳴るのに、正確には測れません。

マンションの向かい側に去年秋にオープンした私立病院があります。「社区病院」という看板があります。ただ、あまりにも突然にできた病院なので、大丈夫かなという感じがあります。しかし、体温を図ってもらう程度のことなら、どこも一緒じゃないですか。

医者は、私が入るまで、暇そうにしていたおばさん先生でした。
患者が入るや否や、最初にかけてくれた言葉は「何故今になってやっと来たの?」でした。
「(???)だからいま、来てるじゃないですか?」
体温を測った結果、38度にはならなかったので、「低熱です」と言われました。
しかし、次のフレーズは、「これはもう点滴しなければいけませんね!」
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「点滴はやめてください。夜、シフトがあるし…」
「点滴も受けないで、何しに病院に来たのですか。これだと何もしてあげられませんよ。検査もしないというんですか…」
「検査はもちろん受けるよ!」
「改めて言っときますが、ここでは新型インフルの検査はできません。ただ、あなたの病状から見ると、新型ではないように思います」

といったやり取りの後、血液検査のシートを書いてくれました。
「これを1Fで費用を払って、また2Fに戻って検査を受けてください。」。

もう余計な体力を使いたくないのに…
「すみません。先に検査を受けさせてもらって、出る時に費用を払わせてもらってもよいですか?」
「そんなこと、できると思いますか?」
「つまり、2Fでも費用が払えればすぐに払えます。もっと患者にやさしいレイアウトがあるとよいのにな」
「そんなこと、私やあなたレベルの人で決められることとでも思っているのですか?」

おばさん先生は有り余るほどの体力の持ち主であるだけでなく、口のほうもたいへん達者でした。

しばらくしてから白血球をはじめとした18項目の検査結果がプリントアウトされました。
意味がよく分かりませんが、半分ほどの項目の後に異常表示の「H」か「L」が出ていました。
それをおばさん先生に渡しました。
「もう、あんた、ウィールスも細菌もあります。点滴ですよ!!でないと、夜また熱が出ますよ。そうね。今はもうすぐ退勤の時間だから、皮膚テストはもうできないので、Cefalotin Sodiumやゲンタマイシンは投与できません。ペニシリンは体に負担になりますし。
だ、か、ら、あなたにはぴったりの薬は『アジスロマイシン』です。」

「そのう、抗生物質はできれば使いたくはないですが…」
中国人は普通の風邪でも抗生物質をバンバン投与しているので、深刻な抗生物質不足に陥っているという報道が頭を掠めました。

おばさん先生は怒り出しました。
「あなたは、私がむやみに抗生物質を使いたがると思ったのですか。抗生物質の使用管理に関して、国はちゃんと決まりを設けています。あなたの血液検査の指標を見て、ちゃんとした根拠を見つけたから出すことにて、あなたの症状に見合うものにしました。
 それに、『アジスロマイシン』はSRASの時、手柄を立てたことで知られていて、副作用があまりなくてよい薬ですよ。」

SARS???私の低熱程度の風邪に、そんなものものしいものを使う必要が???
それに、SARSが全治した人は、抗生物質の使いすぎで、股骨頭壊死の副作用に悩まされているという社会問題もあります。幸い、一回しか受けない程度ならそんな心配はないと思いますが…

決して引かないおばさん先生の勢いに気おされ、何故か自分の思考回路は「点滴を受ける」Or「受けない」という選択肢しかなくなっていたようです。「薬を飲む」選択肢はすっかり忘れてしまいました。
しかも、「点滴を受けないと熱にうなされ、どんどんひどくなるだけ」ということばかり強調されます。

結局、気づいたら「そう言われるなら、点滴するしかないですね」という結論になってしまいました。
おばさん先生はやっと安心した顔になり、「どれどれ。あなたの喉を見せてください」と袋に入ったアイスキャンディーの棒を取り出し、私の口に入れました。
「まあ〜、扁桃腺が化膿しています!」
そう言いながら、5秒もしないうちに、棒はもうゴミ箱に捨てられてしまいました。
「これほどなのにあなたは点滴を受けないと言ってましたね」。

「あ〜、あなたのお勧めで点滴を受けることにしたのは、本当に正解ですよ」、と何故か、そのような気持ちにすらなりました。

「ではですね、アジスロマイシンに、消炎の薬、熱止めを配合しました。まずは1日の分量だけですから。明日は早めに来てくれれば、皮膚テストは可能ですので、ほかの薬にします。早く来てくださいよ」。



伝票をカウンターに持っていき、3種類の薬代金は、いくらになるのかな??
この病院はできたばかりのため、医療保険の対象病院にはなっていません。したがって、ここで診療を受ける人は、すべて個人全額負担です。中国では、普通、個人負担と保険負担とで、医師が出してくれる薬にかなりの差があります。
「100元ぐらいになるかな?」と自分なりに計算してみました。
が、なんと「146元です」と言われ、びっくりしました。

点滴室はきれいな部屋でした。暇そうにしていた看護師は、26歳の河南省の女性です。
ティッシュを受けるためのゴミ袋を用意しくれたり、
カイロを渡して手を暖めてくれたりして、気の利くやさしい人でした。
血液検査の結果が分かるといったので、「では説明をお願いしますね」と結果の書かれていた紙を渡しました。
「あ〜、大丈夫ですよ。細菌が原因の普通の風邪ですね。白血球に異常は出てますが、リンパをはじめ、ほかの重要な指標は大丈夫のようですね。」
「…お医者さんは何故錠剤ではなく、点滴にしたのですかね。」
「それは、点滴のほうが早く直るからじゃないですか。」

やはり、医者不信になる今日今頃です。