「一回0.8元」の苦労 

家で掃除していた時、電話が鳴りました。
「速達です。すぐ降りてきてください」。
職場の玄関からバイク便のお兄さんからの電話でした。
「またか」と嘆いてしまいました。
今日は、職場に行く予定はありませんでした。
家は自転車に乗って15分のところですが、「15分も待っていられない」。
当直の同僚たちにお願いする手もありますが、こんなことでしょっちゅう手を煩わせるのはとても心苦しく思っています。

 普通の会社ならビルの中には入れるので、そこにいる同僚がサインして受け取ってくれますが、ここは関係者以外の立ち入りが禁止されている放送局のビル。私のオフィスは13Fにあり、たどり着くまでに使えるエレベーターは2台しかなく、エレベーターに乗れるまで何分もかかってしまうこともしょっちゅうあることです。かといって、受付室のスタッフは預かってくれればありがたいですが、毎日放送局に送られてくる速達は相当の分量になっているためか、「受付による速達の代理受取」は禁じられています。

 という感じで、本来は便利のはずの速達はこのCRIビルにいる人にとって必ずしも有難い配送の形ではありません。バイク便の担当者から事前に電話していついるか確認してくれればありがたいですが、彼らにもそういうわけにもいかない事情があります。


 「数十個も積んで朝出発するので、一々電話していられません。一件につき取りに来てくれるまで3分ぐらいなら待つけど、5分経っても出てこない場合はあきらめて次へ移動します。でないと、とてもこれだけの分量を届けることができないからです」。
 道理で、私の「15分待ってください」という返事に快い返事はありませんでした。


 ところで、本日のバイク便のお兄さんはモーター付きの三輪車のような乗り物での登場。荷台のところに四角い木の箱になっていました。
 「なかなか凝ったつくりですね」と感心した口調でいうと、20歳過ぎたばかりかのお兄さんは目じりを吊り上げて、「(こんなものに凝る暇はあるもんか、)盗難防止のためだよ」と言いました。

 彼の言葉に触発されたのか、すぐ傍に泊まっていたもう一台のバイク便さんは「そうさ。不意を狙って持っていかれることはよくある話だよね。それはまだ増しなほうで、昨日の出来事聞いた?××のネット書店の品物を届けに行っている最中、××の辻口で強盗に遭ったんですって。品物の代金だけでも数千元に登っていたみたい。真昼間だったのに、まったく警察は何していたのか。っち」。


 CRIの玄関前には朝からいろんなバイク便のお兄さんたちが来ては去っていきます。どの人も山のような荷物を積んでいます。
 ところで、「一回についていくら収入としてもらえますか」と聞いたら、お兄さんは再び目を吊り上げて甲高い声で答えました。
 「8毛銭!」
 0.8元!
 それが私の場合、2回も電話してくれたので、電話代に少なくとも0.2元が引かれてしまいました。山のような荷物を運搬していても、得られる収入はすずめの涙のよう。しかも、私のように彼らは「自己勝手」の時間帯で荷物を届けてくれることを喜ばしく思っていない客もいます。難しい商売です。
 ちなみに、送る側の代金は市内の場合は普通は10元/回。私たちの利便さは彼らの我慢強さを土台にしているのです。
 「すずめの涙」にもくじけずに、タフな姿でにバイクにまたいで、働き蜂のように北京中を動き回っている彼ら、本当のところ尊敬しているし、感謝しています…