【『人民中国』誌への寄稿】声の力を信じたい 

 「それでは、NHKの最新情報をまとめてご紹介します...」
 このようにして、ニュース専門チャンネルCCTV-新聞」で、NHKの震災報道を中国語で紹介するようになってから、昨夜で3晩が過ぎた。
 巨大地震が起きてから、「CCTV-新聞」は全人代と政協会議がまだ閉幕していない中、番組内容を大きく調整した。生放送のある全時間帯(朝6時から夜1時)まで、日本語同時通訳をつけて、最新情報を取り入れて紹介し続けている。
複数の通訳仲間が分担している。私もその中の一人として、CRIでの本職が終わってからCCTVに駆けつけていた。
 日本には70万人の中国人が住んでおり、中でも、宮城県だけでも7000人がいると言われている。それだけ、中国でもこの震災に対する関心度が高い。しかし、決してそれだけではなかった。

 CCTV筋の話では、いつもは0.8あれば上出来になる視聴率は、今回は4以上に急騰している。しかし、人気キャスターの水均益さんは「ちっとも喜べない」と眉間にしわを寄せ続けていた。
 「大勢が見てくれているのは嬉しいが、こんなことで視聴率が上がったのでは、とても喜べる気持ちになれない」
 うなずける。そして、ほんとに良く分かる。私自身も、13億人向けのテレビ番組に日本語通訳として役立ち、声が出せるのはたいへん光栄なことだ。しかし、何もこんなことで役に立たなくても良いのに。遣る瀬無さがある。
 けれど、冷静に考えると、今の自分に何ができるのか。日本語が話せるという強みを生かして、被災地の情報を中国国内に紹介できれば、とてもやりがいのある仕事だと思う。それに、もしこの仕事をしなくても、落ち着いて何かに集中できる心境でもない。
 時々、NHKの画面を見て涙がこみ上げてしまうシーンもある。ティッシュやハンカチにお世話になりながらも、「しっかり耳を立てて、情報をキャッチするのだ」と次の瞬間、自分に言い聞かせている。

 放送が終わってから、同僚、友人、親族から励ましの携帯メールが殺到した。
「震災状況をずっと注目している。日本にいる友人の皆さんの安否を心配している」
 「お疲れ様!どの国にせよ、降りかかってきた災害と立ち向かうのに勇気、辛抱と愛が要る。一緒に頑張りたい、一緒に祈りたい」
 「今回、日本はほんとにたいへんだと思う。援助を必要としているはずだ。日本へボランティアしに行きたいが、伝があれば紹介してほしい。日本のために役立ちたい」
 「心がひどく痛くなる画面ばかりだ。情も涙もない海水よ。ひたすら日本のために祈っているのみだ。ぜひ、あなたの声を通して、日本の皆さんに私からのお見舞いと祈りを伝えてほしい」
 「ショックです。一刻も早く災難が過ぎ去るようお祈りしています。お釈迦様の御加持あれ。そして、日本人民が一致団結して頑張ってほしい。南無阿弥陀仏
 「四海一家、万物一体!日本のために祈っています」

 在北京の日本人友人からも気遣いのメールが。
 「最前線の情報を正確に中国人民に伝えてくれて、どうもありがとう!」

 専門用語の正確な表現を携帯メールで教えてくださった先輩たちや専門家もいて、心からありがとう!こんなに大勢の人の共通した思いを胸に、マイクに臨んだことはなかった。そして、目の前には一人一人の顔や表情が浮かんでくる。もちろん、中国人のだけでなく、日本各地に住んでいる日本人の皆さんの姿も。
13日夜、NHKの仙台スタジオに懐かしい姿が出てきた。鎌倉千秋アナウンサー。二年前に、職場の派遣で北京で半年間留学していた際、CRIにもよく来ていただき、何度もゲスト出演をお願いしたことがある。続けて、14日夜、CCTVによる東京市民への電話インタビューに応じたのは、通訳の先輩の杉本智生さんだった。
CCTV震災特別報道のキーワードに「共同的災害」(同じ災害)がある。複数のキャスターが番組の中でも言ったように、「今回、日本で起きた災害は私たちの災害でもあり、人類共通の災害でもあるのだ」。
 しばらく、災害の影響は続くようだ。しかし、声の力、思い続けることの力を、私は信じたい。
 日本の皆さん、一緒に加油