空母リフォーム祝いの日 玉石混交が目立つネット

 同じ列車追突事件ですが、伝え方により異なる世界が続いています。
 中国のメジャーメディアでは本日の一番の盛り上がりは、空母のニュースだった。古参空母のリフォーム祝いだった。 皮肉なことに、岩松さんは今晩またにこにこと登場しました。ただ、トピックスは空母だった。
 ほかには、ロンドン五輪カウントダウン1年記念、米国債の問題、四川火鍋店が不法に古い油を使っていること、ノルウェーの爆発事件などなど、焦点はいくらでも報道したいだけ数がある。
 それでも、個人的に印象に残った情報は二つあった。
 まずは、最高検察院が調査チームを立ち上げたこと、もう一つは、温首相が国務院の会議で「国民に誠実で、責任が取れる回答を」と求めていたことだった。
 
(ブログを書きつつ、ながら族でみていたCCTVから情熱の報道に驚いた。北京時間2時14分。同時通訳入れてのロゲ会長の挨拶。ロンドン五輪カウントダウン報道だった。東日本大震災の際にでも、生放送は1時までだったが、この勢いは尋常でないと思った)

 ただ、新聞で焦点になったことは、遺族と合意した50万元の賠償金の支払いだった。何と、50万の中には、「早く合意できた人への奨励金としての5万元」が含まれていた。
 「そんなバナナ」な事態に対して、めったに書き込みはしないCCTVの名キャスターも思わずミニブログで声を上げていた。
 
 そして、浙江省の地元新聞に「新聞紙上、記念すべき号になるに違いない」と評されたのはこちら↓
 
 一面から大々的にCMになったのは、予定していた内容が急遽取りやめになった、いや、させられたからだ。
 
 一方、インターネット(ミニブログなど)を眺めると、そこには知られざる世界があった。
 ・「真相を出せ」と喪服姿でデモする遺族たちの行列があった
 ・昨夜、「国務院危機管理専門家取材」と予告まで出していたCCTV-2の番組が放送時間になると、突然「養豚業」のネタになった。しかも、再放送だった。
 「人間よりも豚のほうが大事だったんだ」と酷評があがっていた。
 ただ、「奇跡」はいくらでも日常的に起こっている国なので、今、伝説中のその番組はネットでは見られるようになっている↓
 http://jingji.cntv.cn/20110727/115024.shtml
 「何故、衝突した列車の頭部を埋めたのか」、「すばやく復旧したことへの評価」など、一般国民の知りたいことをたくさん聞いた。そして、意外性のない普通の答えだった。
 「なんだって?もし本当に埋めたとすれば、スーパージョークですよ」。
 「急いで復旧し、普通運行を回復したというのは、事故の原因究明はまだ行なわれているので、同じ事故が起こらない保障はない」
 そして、「危機管理には行政手続き上の処理と技術的な原因究明の二つの部分からなっている。中国は前者に長けているが、後者には弱い」
 うなずける。遺族の応対に30以上とも50以上ともあるチームを立ち上げて、一対一で対応する体制は整えている。が、原因究明となると、言葉を費やしたくなくなる粗末さだった。
 普通の答えが普通に聞こえない今だから、普通に聞けてほっとした。
 
 ・ちなみに、応対チームの仕事ははや業績があがった。妊娠7ヶ月の妻を含めて、家族6人を失った男性が、当初の勢いとは裏腹に、「もうこれ以上追求したくはない。皆さん、許してください」と事実上の「(一時)休戦」をミニブログで発表。「何よりも生き延びていくことだ」と理解を示す人もいた。

 ・一方、迷信っぽいような憶測の書き込みもあり、ネット上の情報伝達の不確実さのリスクも十分示された。個々人の判断力が求められる。
 
 ・もう一つ、事故原因を突き止める作業が進んでいるようだ。本当の様子は良く分からないが、うすうすとそう感じさせる書き込みがある。
 気になるのは、やはり、前の列車の操縦士だ。事故発生後、「不思議と人間蒸発したようだ」。ただ、事故直後に彼の周りを通過した人は、「私のせいではない。行けるとぼくが言ったのに、止まれと言われた」と繰り返してぼやいていたと証言。その相手は誰なのか?もうじき真相が判明するかもしれない。
 ただ、これから発表されるものは、普通の「真相」か、それとも「本当」の真相か、まだ何とも言えない。
 
 ちなみに、本日、もう一つのちょっとした議論もネットで見られた。
 北京大学卒の文筆家・加藤嘉一さんが今日、高速鉄道に関する文章を発表した↓
http://blog.163.com/ft_chinese/blog/static/1338117862011627105514377/
 高速鉄道の原因分析について、なぜか、汚職で捕まった前任鉄道大臣に同情的な書き方となっている。大臣は更迭されたが、前任と同じようにしっかりとした管理ができていないところが事故が起こる原因でもある。そういう意味では、中国ではしっかりとした鉄道大臣を任命することが良いのでは、と唱えている。
 一理がありとうなずいた人もいたが、反発した人のほうが多かった。
 新幹線は日本のその後の経済発展に大きな貢献をしたかもしれない。ただ、だからと言って、中国も同様とはまだ言える確信はない。劉元大臣も残念ながら、十河信二氏に並ぶ評価にはならないだろう。
 「安全をほたらかして、疾走ばかりを求める」という誉れがある中国の高速鉄道。今、心配されているのは、レールで走っている車両だけでなく、高速鉄道「中国号」そのもの。一体どこまで行こうとしているのか。
 社会的な不安感が広がっていると言える。
 まあ、あくまで、ここしばらくはミニブログ中毒になった人間としての感想に過ぎない。杞憂であることを祈ってやまない。