日中共同制作のステージ、『下周村』

 ユニークなステージでした。北京、香港、東京の共同制作、日中の共同演出と共同出演による『下周村』(脚本・演出:平田折佐、李六乙;王府井 児童劇院)。
 場所は四川、数百年来、贋の骨董品の製造と販売で名の知られる下周村。村で工場を作るため、工事に入った日本の会社は工場建設中に、思いがけず、地下に眠っている遺跡にぶつかる。黄河文明と肩を並べるほどの未知の文明として様々な人から高く注目されている。発掘して、確認できれば、歴史の教科書が書き換えられそうな大発見のようだ。
 これをめぐり、村人、日本企業、考古学専攻の日本人学生、中国人考古学者、うわさを聞きつけて飛びついてきた骨董商、一人娘を探しに東京から来た父親とその新婚の妻、などなど、様々な人が村の茶館に集まりに来ては、内心の悩み、欲望、期待、妄想、憧れを露にする…
 簡単に言うと、以上の流れのストーリーでした。
 

 日中の役者が二ヶ国語で共演するステージ。コンセプトがとても面白そうなので、とにかく、どうやって言葉の溝を乗り越え、力を合わせてステージを作り上げるかに興味津々でした。
 感想は、一言で述べさせてもらうと、コミュニケーションをとることの難しさをリアルに実感したステージでした。日本語と中国語のつなぎの部分もそうだったが、日本人と中国人、親子、夫婦、同じ空間を生きる異なる層の人たち…言葉の溝を乗り越えて、心の付き合いの難しさを実感しました。全員、理解しあえることを目指して頑張ってはいたが、良い理解が取れていないまま、エンディングを迎えたため、見終わった後、心の中はすっきりしません。

 ストーリー自体も抽象的な部分が多く、元々分かりやすい話とは言えません。それに二カ国が入り、また、日本人役者の話したぎこちない中国語も入り、理解度を難しくしています。同じくコミュニケーションをテーマにする中日共同制作の映画『千里走単騎』は分かりやすかったと思います。
 演出、脚本家、役者及び関係者のたいへんな努力に敬意を払いながらも、かなりの部分、言葉を頼る日中協力の形態、まだまだ引き続き模索が必要なように思いました。


『下周村』日本公演日程
5月15日ー20日  東京新国立劇場