親子のロックライブ

「スターライブ」の謝天笑ライブに行ってきました。
今、中国のロック音楽界の「ゴッドファザー」と呼ばれている
新世代(と言っても30代半ば)スーパースターです。


うだるような蒸し暑さで、ステージから離れた
ライブハウスの一番奥に移動しました。
と、ステージの中心と向かい合っている場所に、
白髪頭のおじいさんが座っていました。
おじいさんはときたま、椅子の踏み台を踏んで、
立ち上がってステージを観察していました。
おじいちゃんの格好は路地で暮らす
その辺のお年寄りとさほど変っていません。
白髪に、白いシャツ、灰色のズボンに、皮のサンダル。
ロッカーではないことは確実にいえる。
しかし、
「これはただものではない」。直感でした。


横顔しか見えませんが、いくら観察しても
どうも顔の輪郭が似ている!
「ひょっとしたら」と隙間をねらって、
「ロックがお好きですか」と聞いてみました。
よっぽどびっくりされたようで、
おじいさんはしばらく言葉が発せられませんでした。
「謝天笑のライブにはよく来られるのですか」、
「最初はいつ頃からですか」とこちらも慌て出して、
質問の山をぶつけました。
おじいさんはすぐ落ち着き、
山東のときから行っていたよ。
 彼の今の音楽は前と比べたら、 
 変ってきたと思う。
 今の音楽は若者だけではなく、
 私のような年寄りにもしっかり伝わる。
 とくに古筝などの民族楽器の取り入れや、
 間奏の音楽などがいいなと思った。」
おじいさんの言葉は、謝天笑と同じく
山東訛りがありました。
しつこかったことを反省しながらも、
もう一度確認しました。
言葉で答える代わりに、頷いてくれました。


ロックは極めて個人的なもので、
歌詞も特にそうですが、
生の悩みに死の衝動、それに性、
様々な個人感情がむき出しに表現されています。
こうした感情表現は同世代の人には伝えたくても、
親と分かち合えるようなものではないとばかりと思っていました。
そういう意味で、謝天笑の父親はすばらしい方と思いました。
息子の音楽を何でも素直に受入れ、それを見守り続けてきたようです。
中国人は親のことをつい、教師や人生の教訓を教えてくれる人だと思いがちですが、
謝のお父さんは息子さんの友達であり、ファンでもあるようです。


今晩のライブの意外な発見でした。