スケッチ 今時の大学生

ワンル先生は私の出会った「先生」の中で、
一番、明るくて、元気で、かわいい先生です。
いつも微笑みで、三日月のように細めている目。
しゃべりも動きも俊敏です。
話をする時は、相手のことをいつも理解し、気を配っています。
学生に対してもきっとそんな態度で接しているに違いないので、
素敵だと思います。
私もワンル先生に教わっているなら、
きっとミーハーになっているに違いないといつも思っています。


年は私より10歳ほど上で、やさしいお姉さんです。
北京市内の大学で日本語を教えているワンル先生は、
今時の中国の大学生の風貌を語ってくれました。


■新しい物好きで、情報が早い
「日本最新の動きをインターネットで常にチェックしているので、
 流行情報は先生以上に知っている。
 情報量では学生のほうが優位に立っている。
 そういうわけで、一層のこと、
 授業はゼミの形にして、皆に自由発表してもらうようにしている。
 お陰で、皆が興味津々に参加できるようで、
 授業中に携帯メールを送ったり、DVD見たり、ゲームする人はいない。」


■心配ごとはなく、忙しくて充実した毎日
「4、5年前までは、まだ学生たちは目標意識がはっきりしていたと思う。
 大学でしっかり勉強して、日本語を生かした仕事に就きたい
 と思う人が多かった。皆、大学での勉強に時間をかけていた。
 今の子は違う。飲み会やカラオケ、集まりなどで、
 大学にいる時間が少ない。
 自分の将来のこと、本当に真剣に考えているのか、
 こちらのほうが心配になっているほどだ。
 一方、来年卒業予定の子は、半分が公務員試験を受ける希望を出している。
 日本語とはまったく関係ない仕事なのに、
 どうして希望したかと聞いてみたら、
 『安定しているからだ』という。
 教師の立場から考えると、やっていること、理解しかねる。」


■決して偽りは言わない 
「日本の大学への公費留学派遣の面接試験をやった。 
  すべてにおいて上出来だった女子大生に最後の一問を投げた。
  『留学が終わってから、何をする予定ですか』、と。
  意外な回答で先生一同が驚いた。
  『良い男性を見つけて結婚したい』。
  昔の学生なら、たとえ内心そう思っていても、
  口に出さなかったと思う。なんと言ったらいいだろうか。」


■想像力が豊かで、何でもできる
 「勉強は不熱心のようだが、実は何でも上手にできる子が多い。
  PPTの制作や芝居を演じる時の想像力、
  これまでにない抜群なセンスを見せている。
  まあ、時代は変わりつつあるので、
  できるのは当たり前かもしれないが、やはり感心する。」


■商才に長けている『総経理』がいる
 「クラスには、皆から『総経理』と呼ばれている男子学生がいる。
  複数の大学の図書館で文房具の店を開いたり、
  遊園地の入場券の卸売りをしたりして、
  最近は、株の売買でも利益を得ている。
  今日も、授業で先生に、
  老後のための資金運用の仕方を演説し、クラスの拍手を得た。
  彼は株で儲かった資金から毎月1000元を出して、
  大学の近くで家を借りた。
  ところが、自分が住むためのものではなかった。
  ウィークリーマンション風にして、
  一日70元で貸し出している。
  インターネットでアピールしたら、
  応募がたくさん来ているという。
  大学院の受験生の面倒を見にきた親たちなどが、
  相次いで泊り客になってくれた。


  しかし、試験の成績がよくない。
  『このままでは、本当に卒業できるのか』と皆が心配している。
  けど、本人はなかなかしっかりしていて、自信がある。
  『中学の時、ぼくは周りから高校は無理だろうと思われ、
  高校の時は大学は無理だろうと思われていた。
  しかし、ぼくは自分の力で大学に入学した。
  今度も、自分の力で卒業してみせる』。


  そんな『総経理』は今は新しい夢に燃えている。
  日本留学して、日本語学校を開くノウハウを身に着けて、
  北京で英語の一流受験校『新東方』に匹敵する日本語学校を開きたいという。
  その夢はまだすぐに着手できるものではないので、
  今の彼は、とりあえず、大学周辺の外国人マンションで
  中国語教室を開こうかと計画を練っている最中のようだ。
  元気な子だなと応援している。 」


苦学生も頑張っている 
「地方の貧しい家庭から来ている子もいる。
 猛烈に勉強しているし、暇があれば、アルバイトに出かけている。
 力仕事もやっているし、最近は新聞配達をするようになった。
 自分で学費と生活費を稼ぐのに一生懸命だ。
 見ていて頼もしい!」


■尊敬されたい、大事にされたい、しっかり鍛えてもらいたい
 「パソコン専攻で、卒業後、日本に行って技師として
  就職が決まったクラスを教えることになった。
  30人がいるクラスで、やる気があるのかないのか良く分からず、
  最初の授業でやめようかと思った。
  しかし、我慢して、頑張って、3回目の授業で、
  全員の名前を覚え、一人一人、名前を読み上げて、
  話をするようにした。
  すると、みるみる、皆の態度が変わってきた。
  きっと、一人一人、先生が尊重しているという気持ちが
  皆に伝わったからそうなったと思う。
  嬉しいことだ。
  今の大学生は、本当は寂しくて、人と平等に、
  ぬくもりのある交流をしたい子が多いように思う。
  大学ではそれぞれ忙しいので、学生同士の交流が案外多くない。
  家に帰っても、一人っ子で話す相手がいない。
  少しでも、授業で皆と交流する雰囲気を出せばいいなと
  いつも思っている。」


ワンル先生のレッスン、今度遊びに行ってみたいです。