開会式のビデオ、66元

今日の北京は涼しい一日です。


五輪開会式のビデオが3日ほど前から、発売になりました。
当日、私は、通して開会の中継が見られなかったので、
ずっと改めて見たいと思って、買ってきました。
海賊版っぽいDVDもたくさん置いている町外れの小さなビデオ・オーディオショップでした。
なんと、五輪開会式のビデオは、正規版しか置いていません。
こんな書き方をすると、問題があることを承知していますが、
そのぐらいに、私は驚きました。
値段は66元。普通のDVDに比べて、かなり高めです。
ちなみに、偶然にも、「マリと子犬の物語」も見つけました。
2枚あわせて、70元に値段交渉しました。


我が家の五輪観戦団、一行4人が今朝、無事安徽省に戻りました。
7日に北京入りし、一週間もない短い滞在でした。
甥たち(9月から高一になるいとこの息子と小学4年になる兄の子)は、
想像以上に現代っ子でした。
それも、パソコンとゲームがあれば、満ち足りている「室内人間」なのです。
ショックでした。
こんな中、暑さにも負けずに、一番旺盛な好奇心を保ち、
北京滞在を楽しんでいたのは60代の父でした。


「せっかく手に入れたチケットなのに、
 ワン試合でもう帰るなんて、もったいな過ぎる。なんたらことを!」。

父が怒りました。
11日午前、外国チーム同士の女子バスケットの試合会場で、
午前中は二組の試合が見られるが、甥たちは一組の試合が終わって、
すぐに、「つまらない」と言い、帰ると言い出しました。


甥っ子たちは、NBAの大のファンで、
女子バスケでは彼らの想像している技が見られなかったため、
「ちっとも面白くない」ようです。
それにしても、二人とも恵まれている環境で育ったので、
「ありがたい」という気持ちが薄いことは事実です。
とは言いながらも、私も勤務があるため、
結局、父だけは残って最後まで見終わりました。


うわさでは、バスケットの中国・スペイン戦のチケットを入手したくて、
束札を扇面の形に並べて、手に握って求めていた人もいたようです。


人気種目、人気の試合とそうでないものとの温度差は、悩ましいものですね。


■五輪開会式、私の感想■
恥ずかしいですが、今日で、やっと通して見ることができました。
それでも、選手団の入場の部分は飛ばしましたが、
改めて私見、偏見として個人的な感想を述べますと、
オープニングがとても迫力があって、良かったが、
展開しているうちに、リズムがなくなり、Boringになってしまう。
2008人が円形を作って、太極拳を実演したところに入ると、
また、改めてリズムが戻ってきました。
それまでは、叙情的なものばかりでした。
テーマソングもあのようなだらっとした雰囲気の中で登場したものだったのですね。
あの雰囲気の中、あの流れの中なら、
あのような緩やかな音楽になったのですね。
シンプルなところがとてもよかったですが、
個人的には、この歌を早く、リズムをつけて歌ったほうがもっと良かったのではと思っています。


この曲とは反対に、
オープニングのところで、9才の北京の女の子が独唱で
「歌唱祖国」を歌ったところがとても良かったと思います。
何故かといいますと、元々の曲は行進曲で、革命ソングでした。
しかし、スピードを緩やかにすると、あそこまで叙情的なものになれたのですね。
驚きました。
取材の中で、一番北京の人が五輪開催に寄せる思いでは、
「五輪は中国が貧しさから脱却したので、開催できたものだ」というものが多かったです。
だからこそ、「歌唱祖国」の歌詞がここではとても生きてきたと思いました。
「われらの祖国をたたえ、これから、繁栄と富強の道を歩むのだ」。

張芸謀監督はきっとその歌詞を生かしたかったに違いありません。
ここでは、張監督のアレンジがとても良かったと思いました。


一方、テーマソングの「You And Me」はやはり、もう少し若いイメージ、
ダイナミックなイメージを作り出したほうが良いかと思います。
リズムを早くし、伴奏の作り方を変えると、イメージが変わると思います。


これはさておいて、張監督は本当にお疲れ様でした。
踊りながら絵を描くシーンに心打たれました。
凄まじいアイディアだと思いました。


一方では、中国の伝統文化を万篇なく取り入れなければならないというような
使命感が見え見えで、何かにとらわれず、
単純に楽しみたいという気持ちがやや欠けているように思います。


重厚さ、悠久さ、奥深さ、画一さの表現に長けていました。
また、ハイテクを駆使しているというイメージの醸成にも工夫していました。
ただし、ちかちか光る電飾で変化をつけることは、たまに使うととても効果的ですが、
最初から最後まで使い続けると、使った回数だけ、
感動も減るように思います。


それから、中国の中継元のせいなのか、画面が全般的に暗かったです。
甥っ子たちが「暗くて、見づらい」と感想を漏らしましたが、
その気持ちが理解できました。
点火式について、ラストランナー・李寧さんが途中、
格好よく闊歩して走っていたシーンも写っていて、とても良かったですが、
とうとう、李寧の顔のアップが一度も見られませんでした。
それより、吊るされて、たいへんそうだ、というイメージが
伝わってしまいました。もったいなく思いました。


また、中継も、用意した文言を感情をつけて、朗読はしますが、
それ以外の説明や解釈がやはり少ないように思いました。
こちらも、使命感に漲っている半分、楽しさ、楽しませるという意識が薄いようです。


演出に関して、「中国の古代文明を強調し過ぎている。最近の中国の顔が見えない」という厳しい見方も
ありました。個人的に、ネットで見たあるブログの書き込みにうなずけました。
http://www.blogchina.com/20080813588289.html


整然としていて、画一した動作で美を強調していますが、
バラエティと個性を重んじている今の社会の価値観とは、
相受け入れられないものがあるのでは、と、面白い問いかけをしています。