負けた!天意市場の売り子に

なんて自分が愚かで、心理的に弱い人間と思いました。
中国語の格好表現で格好つけて言うと、「心不够狠」です。


玉淵潭で取材を終え、朝のトレーニングをしていた
おばちゃんたちと一緒に出口を出れば、
地下鉄に行くバスに乗り込み、降りてみたら、
目の前が天意市場という卸売り市場でした。


よしゃ、よしゃ。
目の前にあるなら、ぶらぶらしてこよう。
そして、北京が寒くなったので、ブーツでも買おう。
先日、同僚が履いていたインターネットで買った
ブーツは良さそうに見えましたが、値段はなんと、たったの40元。
私も見習って、思いっきり安いブーツを買おうと決めました。


ヒールのなくて、履きやすいもの。これが原則です。
見ているうちに、良さそうな屋台の前に来ました。
「いくらですか」と聞くと、
「160元です」と答えてくれました。


「高過ぎです。安くしてください。」
「いや、うちの店のブーツは値切るのはごめんです。」
「ああ、そっ?」


そこで、正しい行動は、きびすを返して、
見向きもしないふりをして、その場を思いっきり去ろうとすることでした。
もちろん、これは今思い返せばのことでした。
そのとき、私は、正反対の行動をしました。
「まあいいや、買うかどうか別にして、
 試させてください。」


履いてみた感じ、悪くなかったです。
「綺麗ですよ!格好いいもの!」
店員の勧誘が始まりました。
「では、正直に言いますね。
今日の予算は100元以内です。
ここは高すぎです。」


そこで、思いっきり過ぎ去ろうとすれば、
後ろからおっかけられ、「じゃ、安くするから」と言ってくれたと思います。
しかし、私はその場に残って、値切る交渉をすることにしました。


「お嬢さん、待ってください。
 今日は店がオープンして、
 まだ一足も売っていない。
 あなたは今日初めてのお客さんになるので、
 値段は交渉できるから。」


だったら、早く言えば良いのに。
「値引きはしない」と言ってくれた店員も
うそをついているような顔でなかったことを考えると、
私が彼らにとって、貴重な一人目の客だから、
特別に言ってくれたのかなと勝手に思い込みました。


「じゃ、いくらで売ってくれるの?」
そこで、また心理戦が始まりました。
「今日のファーストキャスタマー(开门生意)だから、
 お客様が手ごろとご判断の値段でどうぞ。」


こう来るとは。やられました。
何故か暗示を受けたように、心の中では、「120元以下なら買う」と勝手に決めました。
店員は心の中で「100元を割る」ことで覚悟していたのに。


悩みました。いくら言えばよいのかな。
まあ、とりあえず、「110元!」。
店員の顔が綻ばせました。2、3秒黙ったままにしていました。
「なら、120元にしましょう。友達になったので!」


「なら、友達なので、115元でどうですか?」
少し惜しそうな表情を見せてくれました。
「まあ、最初のお客さんなので、そういうことで、
 私たちの店に幸運をもたらすことを信じているので、
 そうしましょう。」


「やったー!」
そのときはとても嬉しかったです。
しかし、後でどう考えても、私はKYでした。
店員の許してくれる値切り幅を、
私はうまく捕らえることができなかったのではないか。
しかも、知らない間に、予算を超えていても、
自分が超得意の気分で買い物ができました。


40元と115元。学費です。
本領を磨いて、いつか、必ずまとめて稼いでおかないと。


値切ることが下手だったことも悔しかったですが、
それよりも、自分の考え方がほんとに平凡だったことを悔しく思っています。
この平凡さというのは、たとえば、バドミントンの試合の時でも、
無意識に、相手になるべく受け取りやすいところにしかボールが送れないということ。
ボールは相手が打てるところに持っていくもの、
という根強い思想回路がある。何とか変えたいのに、変えられません。
今後の課題です。


ただ、面白い発見も一つありました。
唐山でもらったわけの分からないぬいぐるみを
リュックにつけたまま、市場に行くと、
思わぬ良い効果が得られました。
「かっわいい!!!はははは。
 あなたのぬいぐるみ、好きです!
 あなたもきっと良い人です。
 このピン、安くしてあげるからね」。
20代前半の売りっ子は、じっと私のぬいぐるみを見ていました。
そして、自ら自分の品を安くして売ってくれました。
謝謝!