番組案内:北京放送を支えた日本人スタッフ&帰国華僑

またGWが始まりました。北京は30日は夜中に、天安門広場へ急ぐ、お客さんを満載した大型観光バスがぞろぞろいました。翌朝の国旗掲揚式を一目見るための観光客だそうです。
あふれんばかりの観光客で混雑するに違いないだろうと思って、
どこにも出かける気持ちになりません。人の多い時は大人しく家に閉じこもったほうが賢明な選択です。

さて、先月から生まれて初めての動画番組の制作を試みました↓
奥が深いんです。そして、チームワークが大事なのです。
目の中で見て記憶した事とカメラで記録してほしいこと、
かなり違いがあることに気づき、そして、カメラで前者を忠実に
記録することの難しさ、ほんとによく分かりました。

限られた時間との戦いもあり、ほんとにたいへんでした。
そのため、不十分とは十分承知しながら、以下の番組を制作しました↓
http://japanese.cri.cn/781/2011/01/26/Zt142s170044.htm

つばめの担当した第8話、第9話以外にもぜひ
ほかの回も合わせてご覧いただければ幸いです。

ちなみに、先日の日本酒蔵元のご主人の取材もアップしました↓
http://japanese.cri.cn/1041/2011/09/30/141s181117.htm
お酒は門外漢ですが、お話をとっても面白く聞かせていただきました。

石碑の立てられているコンテクスト

 ここ数日、方正県の「日本開拓団民亡者名録」と書かれた石碑のことが、中国でたいへん議論になっている。
 圧倒的に批判的な声が多い。その中で、個人的に本日の新京報が比較的バランスの取れた紙面づくりをしていたように思っている↓
 

 一番最後の、歴史学者の余戈氏は、石碑の命名の仕方に疑問を投げかけ、「開拓民」は日本サイドの言い方で、初期の開拓民は軍隊ではないが、武装されていて、必要に応じて、日本軍の予備として人手を提供していた性質があることに鑑み、少なくとも「“”」を入れるべきだと指摘した。60年代、周恩来氏の指示で石碑が作られた時も「日本人墓」と漠然とした言い方をしていたが、いつの間にか現在の名前になって、県の名義で石碑を建てたことに疑問を出した。
 個人的に納得できる解釈だと受け止めた。

 【专家称方正县做法突破历史尺度 开拓团至少应加引号2011年08月05日 04:02 来源:新京报 作者:杨万国】 http://t.cn/a8pfLE 知名抗战史研究学者余戈:”起码应该在碑文主题的“开拓团”上加引号。修改序言,其中必须加上中国政府对开拓团的历史性质评价,并标明地方政府立碑立场。”

http://news.ifeng.com/mainland/special/rijunlibei/content-1/detail_2011_08/05/8191538_0.shtml

http://epaper.bjnews.com.cn/html/2011-08/05/node_16.htm

ちなみに、「石碑」のことを中国ではどのような文脈で報道され、評論されているのかについて見てみたい。
今日の新京報を例に、A25版に丸一ページの石碑報道だったほか、日本関連のニュースがもう2本注目されるべきだ(海江田氏が原子力担当の経済産業省高官3人を更迭した以外の本件関連ニュース)。
一つは先日発表された「防衛白書」、もう一つは右よりとされている歴史教科書の横浜市全市公立学校での採用だった。
 ◆A04「中国新聞 時事」版に 日本の2011年版「防衛白書」に対しては、
中国外交部が「中国脅威論を誇張させている」と日本政府を非難する記事が掲載されていた。
 ◆A30「国際新聞・区域」には、育鵬社の歴史教科書が横浜市の147箇所の公立中学で全面採用のニュースが掲載。
 テレビはまだ見ていないが、おそらく同じ構成だったと思う。今朝聞いた中央人民放送局の報道は同じような構成だった。
 同ラジオによると、横浜市教育委員会の上述の決定により、全部で3万あまりの生徒がこの教科書で歴史を学ぶことになっている。さらに、論説員のとげとげしいコメント(大意)で結ばれた。
 「今年の大地震の後、原発事故を受けて、子ども達を放射能の危害から守るため、一部の小中学校はキャンパスの地上の汚染された土を掘り返して環境の浄化に努力してきた。放射線は目に見えないものだが、人体に害がある。同じように、意識できないかもしれないが、精神的にもし放射能のような誤った歴史観で育った子ども達が大きくなって、その精神はどうなるのか。そのような教育を受けた子ども達が大きくなってから、日本がどうなるのか、懸念されるべきことだ」

 折りしも、東京にいるメディア界の大先輩のErliuziさんから大類氏のメールが転送されてきた。前後の文脈が分からないこともあり、外国人の私には、完全に読解できるまでに困難があるが、その中で、意外だと思った一段落だけをピックアップして貼り付ける。

 「この6月、別件で方正に行ったところ、石碑の基礎ができているのだと外事弁公室の方に見せられました。「?」と思いながらも、今回石碑がこんな形で出来上がっているのを見ますと、美観から少し疑問が湧きました。方正地区日本人公墓と麻山地区日本人公墓(鶏西市麻山で、集団自決した400名ほどが葬られている公墓で1984年に建立されたものです)のすぐ後に立っていて、景観からすると、かつての公墓の後方に広々と広がるさわやかな姿が一掃され、少なくとも私の美意識からすると拍手を送りたい気持ちにはなりませんでした。どうして側面の方に建立しなかったのか。
  また、5000名に近い人々は無理としても、もっと多数の名前が判明してから石碑を建てることができなかったのか、という疑問も持ちました。しかし、県政府の意向であり、関係者に個人的に少しばかり意見を述べるに留めておきました」

 個人的に、石碑を建てることも含めて、歴史をなんらかの形で後世に伝えることには反対しない。碑文の内容はまだ見ていないが、伝えられてきた情報では、やはり問題もあるように感じている。
 それにしても、方正県は一体、どうして、何故、性急にそうした石碑を作ったのか、疑問が残っている。 

7日間振り続けた雨

 うわべでは、事態が沈静化に向かいつつあるようだ。ミニブログでの書き込みの量さえ減っては来ている。代わりに、「明かり窓」のように「このミニブログはすでに削除された」という空っぽのボックスが目立っている。
 初七日を前に、複数の新聞は印刷直前に、紙面の差し替え命令が発令されたことはもう秘密ではない。
 ただ、何か溜まり続けているもの、蓄積し続けているものがあることは間違いない。恐ろしいエネルギーとして蓄積されつつある。 
 
 事件発生翌日夜の記者会見に出席した鉄道省の問題発言続出の報道官は、今や懐かしく思われており、「誠実な人」だと偲ばれている。これはお世辞抜きの本音だ。というのは、最近出てきた鉄道次官は、「土を埋めたようなことはしていない」、「捜索を停止しろうとは一度も指示を出したことがない」、「救援作業を愚かにして焦って復旧工事に切り替えたと言われているが、これは現場で救援に頑張っていた2000人以上の鉄道関係者の心に傷をつけた言論だ」と瞬きをせずに、テレビで公言していた。閉口した。それに比べて、問題報道官は「穴をほって土の中に埋めた」、「救援作業終了後にも2歳半の赤ちゃんが救出された。これは命の奇跡だ」と事実は否認しなかった。
 報道官の「あなたたちが信じよう、信じまいと、とにかくぼくは信じている」が流行語になっている。

 初七日の30日の取締りがいつも以上に厳しかった。差し替えられた「新京報」の一面はこの写真と見出しになった。
 「七日間雨が降り止まなかった=初七日」
 「一日に二回も警告をならした=一日二回も差し替え指示が出された」
 「雨が降り続けている中を走る自転車=中国は雨の中で前進している」
以上のことは決して深読みしたわけでもなく、秘密でもない。
そこまで来ている。
 

 その代わり、鉄道省の負債状況への追及は行なわれている。
 昨日、私の担当した「経済直行便」もその話題でした。
 記事は以下のようまとめてみました。

■ 高速鉄道事故、中国経済の成長スピードにも影響かhttp://japanese.cri.cn/918/2011/08/03/144s178628_1.htm

 番組録音は以下からです
http://japanese.cri.cn/782/2011/08/02/142s178590.htm

          ◆◆◆
 7月23日夜、温州郊外で起きた高速列車の追突事故から10日経とうとしています。
 2015年までに、高速鉄道営業キロを1万3000キロに伸ばし、世界最長になる整備計画を進めている最中での出来事だけあって、大きな衝撃が走っています。
事故が起きたのは、23日前に開通した北京・福州線です。全長2233キロ、いま、中国最長の高速鉄道路線でもあります。中国鉄道省は、事故再発を防止するため、2ヶ月にわたる全国規模の安全点検を進めており、隠れた安全リスクの摘出に尽力しています。
 一方、今回の事故が中国経済に与える影響も注目されています。鉄道関連株の暴落で影響を受けたA株市場(国内の投資家向けの人民元立て市場)を始め、急速に整備されつつある高速鉄道網とそれを支える鉄道関連投資と負債の行方、ひいては中国経済の今後の成長パターンへの影響に社会の注目が集まっています。

■低迷が続く鉄道関連株 
 23日(土)夜の列車事故を受け、上海証券取引所に上場している鉄道関連株33銘柄の時価総額は、わずか2日で376億元(日本円ではおよそ4500億円)も縮小しました。
 鉄道関連株はここ数年来、勢いよく成長し続けていることから、株式市場を押し上げる上で重要な役割を果たしてきました。ただ、今年に入ってから、鉄道株は調整期に入っていました。2月初め、元鉄道相の汚職問題が発覚したのを受け、鉄道株の時価総額はピーク時より30%下がりました。
 アナリストは、今回の事故の深刻さから、もともと疲弊状態にある鉄道株は、今後も引き続き下げ傾向が続き、下半期は継続的に激しい変動にさらされるだろうと見ています。
 「追突事故が中国の資本市場に与えた影響は投資者の予想を上回るものになった。そのマイナスの影響はもしかしたら、まだ始まったばかりに過ぎないかもしれない」という見方も出ています。

■減らされるか、インフラ整備の投資
 固定資産投資は、中国の経済成長において重要な役割があります。2009年、GDPに占める固定資産投資の割合は67%でした。固定資産投資の25%をインフラ整備が占めており、その中で最大のシェアを占めているのが鉄道投資です。
計算によりますと、7000億元の鉄道投資には3000万トンの鉄鋼、1億4千万トンのセメントが必要です。また、全国の半分以上の物流と8割の石炭が鉄道で運搬されていることから、鉄道投資は鉄鋼、セメント、石炭産業ともプラスの相関関係にあり、経済成長を牽引する要素の一つです。
 もし今回の事故により、高速鉄道整備への投資テンポが緩やかになっていくとすれば、中下流産業の需要にも影響が及び、鉄道投資による経済成長を牽引する力が衰え、経済の各種指標にまで響くのではという懸念が出ています。さらに、事件の影響で国産技術や設備の仕入れが減られることになれば、鉄道信号と通信システムのみでも、年間500億元の市場シェアに影響が出る試算になります。
 ただ、こうした懸念は短期間のものに過ぎず、長期的に見れば、中国経済が高度成長を続けていく勢いは変わらず、人や物の流れが伸び続けていく傾向も変わることはない。高速鉄道網の全国普及計画そのものの傾向も変わらないだろうという指摘もあります。
 アナリストはさらに、もし今回の事故処理の成果として、鉄道省の改革が実現となれば、将来的に見ると、市場の上昇を押し上げる良い材料にもなると見ています。

■世界最速の高速鉄道整備計画 
 中国鉄道省が2010年3月に発表した高速鉄道整備計画によりますと、2012年までに、「四縦四横」(国土を横断、貫通するように縦、横4本ずつ整備する)の幹線を整備し、それにより、中国の高速鉄道は全営業キロが1万3千キロに伸び、世界最長になります。海外から高速列車の導入を決めたのは2004年のことだったので、ゼロから世界一まで10年足らずで完成するという計画になります。
 これらの幹線は、すでに運行開始の路線は13本、建設中が26本、これから着工予定のものは23本です。中でも、すでに営業開始している13本の路線だけでも、すでに5898億元の資金が投入されました。また、建設中の26本の総工費は8491億元になると見込まれています。
 鉄道省は、鉄道整備の資金は保障されているので、将来も投資は減らさないと訴えていますが、業界筋は今回の事故を受け、投資規模にはある程度影響が出るではないかと見る意見もあります。

■高まる鉄道省の資産負債率、金融当局も警戒
 中国の鉄道整備の資金源は二つの部分からなっています。一つは建設基金減価償却基金、地方政府の出資および社会保障基金などの機関投資家の資金、もう一つは銀行融資と債権の発行です。中でも、後者の割合が極めて高いとされています。
 この3月末の統計では、中国鉄道省の資産負債率は58.24%で、負債残高は2兆元近くに達しました。今回の追突事故は、債務リスクをいっそう高いものにしたと分析されています。
 7月26日付の北京の日刊紙「新京報」によりますと、鉄道省は7月21日、今年3回目の短期融資計画として、総額200億元の債権を発行しました。しかし、実際に市場で募集できたのは187.3億元に過ぎず、残りの十数億元は複数の銀行が引き取らざるを得ないという事態が起きました。
 中信債券のアナリスト・張宏波氏は「鉄道整備計画の規模拡大に伴い、鉄道省の資金不足問題が顕著になっている。もし、今後も利子付債務に頼って資金調達をするなら、年間の有利子負債は5000億元に上り、2015年までに負債総額は4兆6800億元になり、資産負債率は72.2%に達する恐れがある」という分析を示しました。
 企業負債の警戒線は60%です。それに比べ、中国鉄道省の資産負債率は58.24%になり、しかも高まっていく方向にあります。
拡大傾向にある鉄道省の債務リスクに対し、市場と金融当局は警戒を強めています。中国銀行業監督管理委員会はリスク予防を下半期の重点課題に据え、鉄道セクターの融資問題をしっかりと処理すべき課題の一つに列挙しています。 また、鉄道省がこれまで銀行融資を受ける際、利子は基準金利より10%も低く抑えられていましたが、長年、借金だけが増えている状況に鑑み、鉄道関連融資の利子は今年の年頭からほぼ、基準金利に戻されました。

■短期間での改善が望めない収益状況 
 ところで、拡大されつつある投資に対し、鉄道省の収益構造はとても喜べる状況にありません。
 鉄道省が明らかにした昨年度の財務諸表によりますと、2010年度の売上は6875億元なのに対して、利益はわずかの1500万元でした。
また、中国における高速鉄道の敷設コストは、1キロ当たり1億4200万元もかかります。この巨額投資に比べ、現段階の収益性はそれほど芳しくはありません。武漢と広州を結ぶ高速列車を例にすると、2009年の開通から、延べ利用客数は2000万人に達しましたが、赤字は30億元にもなっています。
 高速列車はまだ普及段階にあり、短期間で大量の乗客を引き付け、高額な収益を出すことは現実的ではないし、運賃の引き上げにより収益性を高めようと思っても、やはり一定期間の時間がかかります。
鉄道省の負債率上昇のリスクが指摘されている一方、「確かにリスクが大きいが、政府系のサポートがあるので、資金サプライに問題が生じるような事態にはならないだろう」という意見もあります。
今回の高速鉄道事故は中国の国民に、今後、中国の向かうべき道、求めるべき暮らしについてじっくり考えるきっかけを提供しました。と同時に、事故が今後の中国経済のあり方に与える影響も、引き続き注視されます。

止まっていない「バカ」の連続

 1泊2日の職場の合宿で、北戴河という海(渤海湾)へ行ってきました。
 今も原油漏れが続いている海域までどのぐらいの距離なのか知りませんが、北戴河の今夏はいつも変わらない、いや、年々にぎやかになりつつあるようです。
 2年ぶりに行ってきたのですが、今回もロシア人の家族連れをたくさん見かけました。
 一方、鉄道事故の処理には変化が見られたようですが、根本的には見えていません。
 28日、昨日、宿泊先の保養所のロビーで温首相が事故現場を訪れ、記者会見を開いた映像を見ました。
 それに先立ち、新華社通信は事故の原因に関する結果を発表。「落雷で信号が赤から緑に変わった」という信号のミスが指摘された。「ようやく、雷神様の冤罪が晴らされた」、「おなかを抱えたくなる理由」だと揶揄もされているが。
 民間の世論調査会社の調査結果によると、温首相のお目見えにより、民衆の気持ちは幾分か穏やかなになった。詳細はhttp://t.cn/aY7jr0
 ただ、釈然としない点もたくさんある。
 これまで、一つのバカな対応により、その次、そして、その次の次もバカな状態続いている。このバカな継続状態が少なくとも、今のところ、根本的にとめられていないように思う。
 つまり、
 事故発生(列車運行上、最悪の事態)

→バカ1)現場では
 人名救助よりも復旧工事を優先、2)原因究明よりも追突車両をばらばらにたたいて、穴を掘って埋める 3)救援作業が終ってから最後の生存者(2歳半のイイちゃん)が発見

→バカ2)鉄道部の王報道官
 「史上最も混乱した」記者会見、問題発言続出、役に立つ情報がなかった。流行語がたくさん生まれた。
 (車両頭部を埋めた理由は救援のためだ、についての現場の釈明に対して)「君が信じようと信じまいと、とにかくおれは信じている」、
 (もう生きている気配はどこにもないので、救援が終了したと宣言された後に、事故発生20時間後に2歳のイイちゃんが救出された」)「これは、命の奇跡です。こういうしかないです」

→バカ3)報道体制
 政府系メディアが事故発生翌日は、解放軍の階級昇級式がメインニュースで、事故報道の扱いが小さかった;
 一方、ノルウェーの爆発事故に関する報道がたいへん綿密でレベルが高いと評されている。

 以上は、ほぼすべてが翌日までの「バカ」だ。
 【事故発生→人命救助→事故原因究明】という誰もがこれが普通だろうと思っている手順が悉く覆されていた。

 その後の「バカ」をピックアップすると、
・列車ダイヤの復旧(壊れた車体が高架橋の下に横たわっているまま)
・埋めた車体をまた掘り出した
・死者への賠償金について、「すばやく合意した人に対して、5万元未満の奨励金を出す」と公の報道で明らかになった
・賠償金金額の少なさ。しかも、火葬して証明書を見せることが受領の条件
・事故原因調査チームというより、数十の遺族対応チーム(見方を変えれば、怒りを爆発させないよう気持ちをなだめる、もしくは行動を監視するチーム」を立ち上げた
・事故発生時間の公式発表の改ざん
・死者の人数をめぐる謎、29日現在まで明らかにされていない行方不明者の人数、名簿リスト発表の遅さ
 ……

 では、温首相出現後の様子はどうなっているのか?
プラスの面
 ・原因追求にいくらか進展が見られたようだ
 ・高ぶる人々の気持ちの軟化の効果
 ・国がこの事件を重視する姿勢の表明
 ・事件の満足できる解決に希望が見られた
 ・これまでの不正や不公平を乗り越えた絶対的な公正と公平がもしかしてあるのかもという期待をもたらした

マイナスの面:
 ・「11日間体調を崩した」説とこれまで首相動向報道の不一致
 ・記者会見の参加資格をめぐる論争
 ・ただでさえ時間が限られた記者会見に、英語の逐次通訳が入り、しかも、通訳のスピードに対して現場にいる記者たちが「たいへん優雅で緩やかに」感じたことへの不満
 ・前後処理への総理の評価など、皆が聞きたい質問が全部聞けていない
 ・最後の質問は「温州人民の素養の高さをどう評価するか」だった。質問を出したの温州の地元記者。「そこまで褒められたいのか」とネットで批判が殺到
 ・記者会見の様子は、香港系のフェニックステレビが生中継していたのに対して、CCTVはしていない
 ・鉄道部長も現場にいたが、「鉄道部に人民に責任のとれる回答を期待している」と言われた鉄道部の大臣は一言も発していなかった

 温首相視察後の目に見える成果は、死者への賠償金金額がこれまでの50万元から91万元以上に引き上げられたこと。
 政府系では作業チームが原因究明を続けており、詳細な結果発表にいたっていないが、民間では、事故およびそれをめぐる処理に対する整理がどんどん進んでいる。
 ◆たとえば、高速列車事故後の世論形成に関する41の質問
http://blog.sina.com.cn/s/blog_5e6dd1c80102ds0g.html
「截止7月28日10时,相关报道共17,595篇,网民跟帖评论2,845,626条;论坛主帖92,796篇,博客文章53,495篇,微博9,616,248条。网民质疑主要集中在8大方面、41点,温总理出现后,网民情绪略有缓和。http://t.cn/aY7jr0
 世界各国で事故が起きてからの処理方法の比較なども行なわれている。

 事後チェック制が導入されているミニブログでは、事故後、書き込みの削除が目立っている。そうした中で、ブラックユーモアが発達している。また、20年前の中国ロックのヒット曲の歌詞を変えて、政府の責任追及をしている替え歌も人々の魂に迫る。
 ◆小話
「清掃係のおばさんに記者がインタビューした。
 「今回の事故をめぐり、お話したいことは?」と記者が聞いた。
 正義に満ちたおばさんが答えた。「国民に損壊車体の賠償請求をしていないだけ、良いんじゃないですか」
 「鉄道部と赤十字会の違いをどう見ていますか」
 問いが続いていた。
 「一个要钱,一个要命(片方は金を取るのが好きで、もう片方は命をとるのが好き)」
 「では、共通点は?「都不要脸(どっちも恥知らずだ)」

 今も続いているバカは、大きな事故が起き、善後処理も済んでいない上、原因究明もどこまで進んだかも分からないにもかかわらず、事態はすでに過ぎ去ったもので、あたかも何事も起きていなかったような方向に向け、焦って主流メディアによる世論形成をしたいことだ。
 首相の誠実さが見えたとしても、鉄道部の誠実さと謙虚さを感じさせてくれる出来事には残念ながら、まだ出合っていない。

一方、「『生命探査機で検査の結果、もう生きている気配はないことが判明したので、救助活動を終えた』という指示を出してはいない」という鉄道部の声明が発表された。
 これも「バカ」の鎖の一環だった。ただ、もし鉄道部が指示を出していなかったことが本当とすれば、誰か指示したところがあったことだけは明白なのだ。それはどこなのか。また、どのような力比べがあったのか。詮索が止まらない。信頼危機がさらにエスカレートしている。

空母リフォーム祝いの日 玉石混交が目立つネット

 同じ列車追突事件ですが、伝え方により異なる世界が続いています。
 中国のメジャーメディアでは本日の一番の盛り上がりは、空母のニュースだった。古参空母のリフォーム祝いだった。 皮肉なことに、岩松さんは今晩またにこにこと登場しました。ただ、トピックスは空母だった。
 ほかには、ロンドン五輪カウントダウン1年記念、米国債の問題、四川火鍋店が不法に古い油を使っていること、ノルウェーの爆発事件などなど、焦点はいくらでも報道したいだけ数がある。
 それでも、個人的に印象に残った情報は二つあった。
 まずは、最高検察院が調査チームを立ち上げたこと、もう一つは、温首相が国務院の会議で「国民に誠実で、責任が取れる回答を」と求めていたことだった。
 
(ブログを書きつつ、ながら族でみていたCCTVから情熱の報道に驚いた。北京時間2時14分。同時通訳入れてのロゲ会長の挨拶。ロンドン五輪カウントダウン報道だった。東日本大震災の際にでも、生放送は1時までだったが、この勢いは尋常でないと思った)

 ただ、新聞で焦点になったことは、遺族と合意した50万元の賠償金の支払いだった。何と、50万の中には、「早く合意できた人への奨励金としての5万元」が含まれていた。
 「そんなバナナ」な事態に対して、めったに書き込みはしないCCTVの名キャスターも思わずミニブログで声を上げていた。
 
 そして、浙江省の地元新聞に「新聞紙上、記念すべき号になるに違いない」と評されたのはこちら↓
 
 一面から大々的にCMになったのは、予定していた内容が急遽取りやめになった、いや、させられたからだ。
 
 一方、インターネット(ミニブログなど)を眺めると、そこには知られざる世界があった。
 ・「真相を出せ」と喪服姿でデモする遺族たちの行列があった
 ・昨夜、「国務院危機管理専門家取材」と予告まで出していたCCTV-2の番組が放送時間になると、突然「養豚業」のネタになった。しかも、再放送だった。
 「人間よりも豚のほうが大事だったんだ」と酷評があがっていた。
 ただ、「奇跡」はいくらでも日常的に起こっている国なので、今、伝説中のその番組はネットでは見られるようになっている↓
 http://jingji.cntv.cn/20110727/115024.shtml
 「何故、衝突した列車の頭部を埋めたのか」、「すばやく復旧したことへの評価」など、一般国民の知りたいことをたくさん聞いた。そして、意外性のない普通の答えだった。
 「なんだって?もし本当に埋めたとすれば、スーパージョークですよ」。
 「急いで復旧し、普通運行を回復したというのは、事故の原因究明はまだ行なわれているので、同じ事故が起こらない保障はない」
 そして、「危機管理には行政手続き上の処理と技術的な原因究明の二つの部分からなっている。中国は前者に長けているが、後者には弱い」
 うなずける。遺族の応対に30以上とも50以上ともあるチームを立ち上げて、一対一で対応する体制は整えている。が、原因究明となると、言葉を費やしたくなくなる粗末さだった。
 普通の答えが普通に聞こえない今だから、普通に聞けてほっとした。
 
 ・ちなみに、応対チームの仕事ははや業績があがった。妊娠7ヶ月の妻を含めて、家族6人を失った男性が、当初の勢いとは裏腹に、「もうこれ以上追求したくはない。皆さん、許してください」と事実上の「(一時)休戦」をミニブログで発表。「何よりも生き延びていくことだ」と理解を示す人もいた。

 ・一方、迷信っぽいような憶測の書き込みもあり、ネット上の情報伝達の不確実さのリスクも十分示された。個々人の判断力が求められる。
 
 ・もう一つ、事故原因を突き止める作業が進んでいるようだ。本当の様子は良く分からないが、うすうすとそう感じさせる書き込みがある。
 気になるのは、やはり、前の列車の操縦士だ。事故発生後、「不思議と人間蒸発したようだ」。ただ、事故直後に彼の周りを通過した人は、「私のせいではない。行けるとぼくが言ったのに、止まれと言われた」と繰り返してぼやいていたと証言。その相手は誰なのか?もうじき真相が判明するかもしれない。
 ただ、これから発表されるものは、普通の「真相」か、それとも「本当」の真相か、まだ何とも言えない。
 
 ちなみに、本日、もう一つのちょっとした議論もネットで見られた。
 北京大学卒の文筆家・加藤嘉一さんが今日、高速鉄道に関する文章を発表した↓
http://blog.163.com/ft_chinese/blog/static/1338117862011627105514377/
 高速鉄道の原因分析について、なぜか、汚職で捕まった前任鉄道大臣に同情的な書き方となっている。大臣は更迭されたが、前任と同じようにしっかりとした管理ができていないところが事故が起こる原因でもある。そういう意味では、中国ではしっかりとした鉄道大臣を任命することが良いのでは、と唱えている。
 一理がありとうなずいた人もいたが、反発した人のほうが多かった。
 新幹線は日本のその後の経済発展に大きな貢献をしたかもしれない。ただ、だからと言って、中国も同様とはまだ言える確信はない。劉元大臣も残念ながら、十河信二氏に並ぶ評価にはならないだろう。
 「安全をほたらかして、疾走ばかりを求める」という誉れがある中国の高速鉄道。今、心配されているのは、レールで走っている車両だけでなく、高速鉄道「中国号」そのもの。一体どこまで行こうとしているのか。
 社会的な不安感が広がっていると言える。
 まあ、あくまで、ここしばらくはミニブログ中毒になった人間としての感想に過ぎない。杞憂であることを祈ってやまない。

出撃と撃退かOr撃退と出撃か?

 事態を終息化の方向に持たせたい。それも、高速鉄道のようなスピードで。
 原因発表は聞こえていないが、第一陣の死者の名前(28人)が発表され、賠償金は一人50万元で話がまとまったと報道されている。
 カメラに出てきたイイちゃんの親族の方も「数日前に比べて、ずいぶん落ち着いてきた。国中からメッセージをいただき、何よりの心の支えです」と話していた。いや、話させられていた。
 
 そして、不思議な事態が起きた!昨夜の「新聞1+1」、平日月〜金21時からの放送となっているが、今晩は不思議と番組ごと消えてしまった。
 せっかく、夕べ、「闯关(難関突破)」という専門用語を聞いたばかりだったのに。はや撃退されたということなのか。
 昨夜の岩松がのにやっとした顔で、「それではまた明日!」の表情が忘れられない。だから、今晩も待っていたのに。明日の晩にこそ会えるよう祈っている。

 ところで、たいへんたいへん微弱であり、結果もほんとに良く分からないが、ネットでの出撃もあった。
 一つはネット投票。ユーザーが自由意志でアンケートを立ち上げることができる。「事故処理に満足できると思うか」のアンケートには、98%の人が「満足できない」を選んだ。
 もう一つは久しぶりに笑えたサイトが転載されている↓
 http://nyanit.com/www.sarft.gov.cn
 テレビ局の管理当局のサイトにニャンニャンと鳴く猫のイラストを入れたいたずらだ。だけど、良くみると、元のサイトのリンクにすべてジャンクできるが、アドレスが新しいものになっているので、本サイトはまだ気づいていないのではと思う。これも一種のサイバー攻撃になるのかどうか。それともただの自己満足か。

 本日のミニブログで転載されていた湖南省の地方紙の一面↓ 

 昨日は、高速列車が雷で2時間ほど停車し、電気もクーラーもない列車の中で乗客がまた我慢せざるをえない事態が起きた。今日は、北京の比較的高級なオフィスビルのエレベーターの中で、事故のため、40代の男性が遺体で見つかった事件も。
 明日は何が起こるか。
 ちなみに、CCTVは本日も海事衛星を使って、プロフェッショナルなノルウェー報道を現場とつないで放送していた。

CCTV「新聞1+1」漲る闘志!!+ネット攻防戦は続く

(夜の書き込み)
 拍手喝采したい出来事が起きた。
 拍手喝采を送りたい相手はCCTVなのだ。CCTVの24時間ニュースチャンネルの「新聞1+1」で、キャスターの岩松さんがシャープな切り込みを始めた。
 その指差すところは、名指ししての夕べの報道官だった。
 「事故が起こったが、中国の高速鉄道は依然として世界最先進の技術で、最も安全な乗り物である。ぼくのことを信じてくれ!」という夕べの映像がフラッシュバックした後、岩松はにこっとさえ見えた顔で、目を光らせて言った。
 「あなたの言うこと、ぼくは賛同できない。何故、最先進の技術があると必ず最も安全だといえる?管理のレベルも再先進なのか?」
 「事故の原因は雷だと言われているが、本当の真相を知りたい。だけど、本当の真相というのは、おかしな表現。そのうちに、本当の本当の真相というような表現をせざるをえなくなるような事態になってほしくない」
 痛快そのものだった。
 ようやくCCTVは声を出すようになった。このような姿勢があれば、安心して、後のノルウェー爆発事件の特集を見ることができる。
 そうそう、番組終了後のエンディングでは、昨夜の記者会見の「ハイライト」がフラッシュバックした。どれも、見る人を驚かせた対応と発言のハイライトだった。洗練された編集者の腕に笑えた。また拍手したくなった!

 うわさでは、C局は「お前ら、痛くも痒くもない報道ばかりして!」と局内の会議で局長に怒られたそうだ。意外かもしれないが、視聴率狙いもあるし、まだ取り締まりの命令が降りる前の突貫報道なのかもしれない。もしくは、ただぐるになってのガス抜きに過ぎないか…
 何がともあれ、ネットにたまっている鬱憤をすでに代弁してしまった以上、何らかの形で国民に説明のつく解釈を出してほしい。
 ちなみに、公式発表の死者人数が、40人に上った。
 旅客たちの荷物の整理も進んでいるようだ。少しずつ、追求が深まっている。
 しかし、今夜、温州市内の広場に遺族たちの座り込みが始まった。
 事故原因の究明と同時に、たいへんな善後処理も待っている。
 良いニュースは、イイちゃんの足の指に血流が戻りつつあるであること。 
 
             ◆◆◆◆
 (夕方の書き込み)
 気のせいか、ミニブログでの書き込みの勢いがピークを過ぎたようです?ただ、中国語の流行語でいえば、これは「下火になった」のか、それとも「ならされた」ものなのかが、分かりません。
ちなみに、総書き込み件数は夕方までに、すでに530万件を超えました。

 これまでの流れを簡単に整理します。
——昨夜10時半頃、待ちに待った鉄道部の記者会見が開かれた。
 30分あまりの会見だった。テレビ中継の途中、スタジオ画面に戻り、司会者のコメントが始まり、しばらくしてからまた中継場面に戻ったというような不思議な中継方法だった。
 最後は「記者会見はこれで終了」と宣言し、無理やり切り上げて終了。
 不完全燃焼としか言いようがない。
http://video.sina.com.cn/p/news/c/v/2011-07-25/010461423185.html
 ——列車の残骸を「葬る」うわさについて、報道官は「証拠隠滅と言われているようだ。そんなばかな。私は飛行機に乗った時にも言った。世界中に注目されている事件なのだ。隠滅できるとでも思っているのか。そんなはずはない。何故葬ったのか。私は現場の人に聞いた。彼らの答えは、高架橋上の車体を下ろすように、地ならしをしていたためなのだ」。
 その答えから分かったことは、1)列車頭部を確かに埋葬したこと。2)当の報道官も事前に情報は知っていなかったようだ。ということは、誰が命令を出したのか、真相はまだ明らかにされていない。
 ただ、本日午後のミニブログで明らかにされた情報では、中国ではこれまでにも脱線事故が起きてから、頭部を埋葬する処理は現場で行なわれていたようだ。それは、証拠隠滅というよりも、そのような処理手順になっているというものなのか、どうか。もしくは、「二度とここで事故が起こらないよう、埋めてしまえ」という迷信なのか、それとも何か訳でもあるのか…
 謎が解けてない。
 そのことから、今回の件に戻ると、実は事故原因はすでにはっきり究明された。発表されていないにせよ、損壊のひどい頭部は壊してもよいという判断ができたかもという憶測もある。

3)鉄道関係者の語り、技術に詳しい人の分析から少しずつ判かになっていることがある。
  ある列車操縦士の話では、「高速列車だけでなく、普通列車でも絶対に起  こりえない事態だ」として、その詳しい分析をしていた。
  また、事故車両の操縦士と後方マスターとの通信記録もネットですっぱ抜かれている。それによると、同じ区間に停車している車両が前方にある情報は後続車両の操縦士に伝えてあり、「気をつけて」と言われていたのに対し、「知道了」というやり取りの記録が残されていた。 
  それなのに、その直後に事件が発生したのだ。
  謎が一段と深まった。

4)死者の人数にまつわる謎も深まっている。
  午後になって、ようやく38人と公式発表された。
  最後に救助された2歳半の女の子・イイちゃん。杭州に帰省する両親に連れられて生まれて初めてイニシャルDの列車に乗った。両親は遺体で見つかり、イイちゃんは、「もう生存者はいない」と諦められていた車両の中から、事故発生20時間後に発見。憤ったイイちゃんの父親(温州某高校の国語教師)の友人は、ブログで「友よ、何でお前は死人の列にまで数えてもらうこともできなかったのか?」と題した書き込みを発表。泣かせる文章だった。
 イイちゃんの両親のミニブログ、そしてそこで発表された写真や娘の成長日記も転載されて、涙を誘う。
 http://blog.sina.com.cn/s/blog_6590e3830100v4o3.html
 
 これからはきっともっとたくさんの遺族の悲しい物語が明るみになってくるに違いない。
 ちなみに、イイちゃんは病院で手当てを受けた後、今日目が覚めて、意識が戻ってきたが、左足の切断手術をするかどうか、医師が判断しかねるところのようだ。両親がもういないことはまだ知っていない。

 なお、政府から死者の名前が公表されないのに対し、ネット版名簿が転送されている。38人分まで整理されている。

5)免職にされた上海鉄道局の後釜は、以前、山東省で70人の死者が出た列車  事故で、重慶に飛ばされた官僚だったことが分かった。

6)ネチズンが自発的に行なった「事故処理に満足しているか」のアンケートでは、すでに7万人以上が参加し、このうちの93%が「ひどすぎる。人命を野草のように刈る」を選んでいる。

7)メディア管理の台所事情が暴かれた。
  掲載されると削除される報道方針だが、削除されるとまた掲載されている。昨日にもまして、手綱が厳しくなっているようだ。

8)本日にも普通通行が一部開通した驚異の復旧速度に批判の声が集まっている。新華社の写真はありのままの様子を記録した。気持ちよくこの写真を眺められる人は恐らくいないのではと思う。
 

 バーチャル空間ではあるが、しばらくは戦いの日々が続くようだ。
http://weibo.com/zt/s?k=7765&pos=0&t=tips&page=1&hasori=1